あつ森 七月に釣れる魚。 南半球の寒中水泳・アプデ・素潜りが話題

【あつ森】7月の魚一覧

あつ森 七月に釣れる魚

魚が釣れる場所は海や川や池以外に特別な場所として、滝の上の川、河口、桟橋といったエリアがあり、そのエリアでしか釣れない魚がいる。 魚の魚影サイズには、極小・小・中・大・特大・超特大の6種類と、その他に背びれ付きや細長い魚影などがある。 魚影の大きさや種類で釣りたい魚を判別しよう。 【一覧表の使い方】• 見出しの部分をタップすると、並び順がタップする度に降順・昇順と変わります。 「No」は魚図鑑の並び順の番号。 「売値」の、「タ」はタヌキ商店、「ボ」は買取ボックス、「ジ」はジャスティン、に売るときの値段。 「食い」はウキを水中に引き込んでいる時間の長さで、時間が短いほど釣り難易度が高い。 「風水」はハッピーホームアカデミーの採点に関係する風水ボーナスの色。 No 名前 売値 出現期間 出現時間帯 出現場所 魚影 出現条件 食い 風水 1 タナゴ タ:900 ボ:720 ジ:1350 北:11月〜3月 南:5月〜9月 24時間 川 極小 短い 2 オイカワ タ:200 ボ:160 ジ:300 北:1年中 南:1年中 9時〜16時 川 極小 長い 3 フナ タ:160 ボ:128 ジ:240 北:1年中 南:1年中 24時間 川 小 超長い 4 ウグイ タ:240 ボ:192 ジ:360 北:1年中 南:1年中 16時〜9時 川 中 長い 5 コイ タ:300 ボ:240 ジ:450 北:1年中 南:1年中 24時間 池 大 超長い 6 ニシキゴイ タ:4000 ボ:3200 ジ:6000 北:1年中 南:1年中 16時〜9時 池 大 20回以上魚を釣る 長い レッド 7 キンギョ タ:1300 ボ:1040 ジ:1950 北:1年中 南:1年中 24時間 池 極小 長い レッド 8 デメキン タ:1300 ボ:1040 ジ:1950 北:1年中 南:1年中 9時〜16時 池 極小 長い 9 ランチュウ タ:4500 ボ:3600 ジ:6750 北:1年中 南:1年中 9時〜16時 池 小 20回以上魚を釣る 短い レッド 10 メダカ タ:300 ボ:240 ジ:450 北:4月〜8月 南:10月〜2月 24時間 池 極小 普通 イエロー 11 ザリガニ タ:200 ボ:160 ジ:300 北:4月〜9月 南:10月〜3月 24時間 池 小 超長い レッド 12 スッポン タ:3750 ボ:3000 ジ:5625 北:8月〜9月 南:2月〜3月 16時〜9時 川 大 20回以上魚を釣る 短い グリーン 13 カミツキガメ タ:5000 ボ:4000 ジ:7500 北:4月〜10月 南:10月〜4月 21時〜4時 川 大 短い 14 オタマジャクシ タ:100 ボ:80 ジ:150 北:3月〜7月 南:9月〜1月 24時間 池 極小 長い 15 カエル タ:120 ボ:96 ジ:180 北:5月〜8月 南:11月〜2月 24時間 池 小 長い グリーン 16 ドンコ タ:400 ボ:320 ジ:600 北:1年中 南:1年中 16時〜9時 川 小 超長い 17 ドジョウ タ:400 ボ:320 ジ:600 北:3月〜5月 南:9月〜11月 24時間 川 小 長い 18 ナマズ タ:800 ボ:640 ジ:1200 北:5月〜10月 南:11月〜4月 16時〜9時 池 大 普通 19 ライギョ タ:5500 ボ:4400 ジ:8250 北:6月〜8月 南:12月〜2月 9時〜16時 池 大 50回以上魚を釣る 短い 20 ブルーギル タ:180 ボ:144 ジ:270 北:1年中 南:1年中 9時〜16時 川 小 超長い 21 イエローパーチ タ:300 ボ:240 ジ:450 北:10月〜3月 南:4月〜9月 24時間 川 中 普通 イエロー 22 ブラックバス タ:400 ボ:320 ジ:600 北:1年中 南:1年中 24時間 川 大 普通 グリーン 23 ティラピア タ:800 ボ:640 ジ:1200 北:6月〜10月 南:12月〜4月 24時間 川 中 短い 24 パイク タ:1800 ボ:1440 ジ:2700 北:9月〜12月 南:3月〜6月 24時間 川 特大 20回以上魚を釣る 普通 グリーン 25 ワカサギ タ:400 ボ:320 ジ:600 北:12月〜2月 南:6月〜8月 24時間 川 小 長い 26 アユ タ:900 ボ:720 ジ:1350 北:7月〜9月 南:1月〜3月 24時間 川 中 短い グリーン 27 ヤマメ タ:1000 ボ:800 ジ:1500 北:3月〜6月、9月〜11月 南:3月〜5月、9月〜12月 北:3月〜6月は16時〜9時、南:9月〜11月は24時間 南:9月〜12月は16時〜9時、南:3月〜5月は24時間 川 崖上 中 普通 28 オオイワナ タ:3800 ボ:3040 ジ:5700 北:3月〜6月、9月〜11月 南:3月〜5月、9月〜12月 北:3月〜6月は16時〜9時、南:9月〜11月は24時間 北:9月〜12月は16時〜9時、南:3月〜5月は24時間 川 崖上 中 20回以上魚を釣る 短い 29 ゴールデントラウト タ:15000 ボ:12000 ジ:22500 北と南:3月〜5月、9月〜11月 16時〜9時 川 崖上 中 100回以上魚を釣る 超短い 30 イトウ タ:15000 ボ:12000 ジ:22500 北:12月〜3月 南:6月〜9月 16時〜9時 川 崖上 特大 100回以上魚を釣る 超短い 31 サケ タ:700 ボ:560 ジ:1050 北:9月 南:3月 24時間 河口 大 普通 32 キングサーモン タ:1800 ボ:1440 ジ:2700 北:9月 南:3月 24時間 河口 特大 20回以上魚を釣る 短い 33 シャンハイガニ タ:2000 ボ:1600 ジ:3000 北:9月〜11月 南:3月〜5月 16時〜9時 川 小 20回以上魚を釣る 短い 34 グッピー タ:1300 ボ:1040 ジ:1950 北:4月〜11月 南:10月〜5月 9時〜16時 川 極小 長い 35 ドクターフィッシュ タ:1500 ボ:1200 ジ:2250 北:5月〜9月 南:11月〜3月 9時〜16時 川 極小 20回以上魚を釣る 普通 36 エンゼルフィッシュ タ:3000 ボ:2400 ジ:4500 北:5月〜10月 南:11月〜4月 16時〜9時 川 小 20回以上魚を釣る 長い イエロー 37 ベタ タ:2500 ボ:2000 ジ:3750 北:5月〜10月 南:11月〜4月 9時〜16時 川 小 20回以上魚を釣る 短い 38 ネオンテトラ タ:500 ボ:400 ジ:750 北:4月〜11月 南:10月〜5月 9時〜16時 川 極小 長い 39 レインボーフィッシュ タ:800 ボ:640 ジ:1200 北:5月〜10月 南:11月〜4月 9時〜16時 川 極小 短い 40 ピラニア タ:2500 ボ:2000 ジ:3750 北:6月〜9月 南:12月〜3月 9時〜16時、21時〜4時 川 小 20回以上魚を釣る 超長い グリーン 41 アロワナ タ:10000 ボ:8000 ジ:15000 北:6月〜9月 南:12月〜3月 16時〜9時 川 大 50回以上魚を釣る 超短い イエロー 42 ドラド タ:15000 ボ:12000 ジ:22500 北:6月〜9月 南:12月〜3月 4時〜21時 川 特大 100回以上魚を釣る 超短い イエロー 43 ガー タ:6000 ボ:4800 ジ:9000 北:6月〜9月 南:12月〜3月 16時〜9時 池 特大 50回以上魚を釣る 短い 44 ピラルク タ:10000 ボ:8000 ジ:15000 北:6月〜9月 南:12月〜3月 16時〜9時 川 超特大 50回以上魚を釣る 超短い 45 エンドリケリー タ:4000 ボ:3200 ジ:6000 北:6月〜9月 南:12月〜3月 21時〜4時 川 大 20回以上魚を釣る 短い 46 チョウザメ タ:10000 ボ:8000 ジ:15000 北:9月〜3月 南:3月〜9月 24時間 河口 超特大 20回以上魚を釣る 超短い 47 クリオネ タ:1000 ボ:800 ジ:1500 北:12月〜3月 南:6月〜9月 24時間 海 極小 長い 48 タツノオトシゴ タ:1100 ボ:880 ジ:1650 北:4月〜11月 南:10月〜5月 24時間 海 極小 普通 49 クマノミ タ:650 ボ:520 ジ:975 北:4月〜9月 南:10月〜3月 24時間 海 極小 普通 50 ナンヨウハギ タ:1000 ボ:800 ジ:1500 北:4月〜9月 南:10月〜3月 24時間 海 小 長い 51 チョウチョウウオ タ:1000 ボ:800 ジ:1500 北:4月〜9月 南:10月〜3月 24時間 海 小 長い イエロー 52 ナポレオンフィッシュ タ:10000 ボ:8000 ジ:15000 北:7月〜8月 南:1月〜2月 4時〜21時 海 超特大 50回以上魚を釣る 短い 53 ミノカサゴ タ:500 ボ:400 ジ:750 北:4月〜11月 南:10月〜5月 24時間 海 中 超長い レッド 54 フグ タ:5000 ボ:4000 ジ:7500 北:11月〜2月 南:5月〜8月 21時〜4時 海 中 20回以上魚を釣る 普通 55 ハリセンボン タ:250 ボ:200 ジ:375 北:7月〜9月 南:1月〜3月 24時間 海 中 長い 56 アンチョビ タ:200 ボ:160 ジ:300 北:1年中 南:1年中 4時〜21時 海 小 超長い レッド 57 アジ タ:150 ボ:120 ジ:225 北:1年中 南:1年中 24時間 海 小 超長い 58 イシダイ タ:5000 ボ:4000 ジ:7500 北:3月〜11月 南:9月〜5月 24時間 海 中 20回以上魚を釣る 短い 59 スズキ タ:400 ボ:320 ジ:600 北:1年中 南:1年中 24時間 海 特大 長い 60 タイ タ:3000 ボ:2400 ジ:4500 北:1年中 南:1年中 24時間 海 大 短い レッド 61 カレイ タ:300 ボ:240 ジ:450 北:10月〜4月 南:4月〜10月 24時間 海 中 長い 62 ヒラメ タ:800 ボ:640 ジ:1200 北:1年中 南:1年中 24時間 海 特大 普通 63 イカ タ:500 ボ:400 ジ:750 北:12月〜8月 南:6月〜2月 24時間 海 中 長い 64 ウツボ タ:2000 ボ:1600 ジ:3000 北:8月〜10月 南:2月〜4月 24時間 海 細長 20回以上魚を釣る 長い 65 ハナヒゲウツボ タ:600 ボ:480 ジ:900 北:6月〜10月 南:12月〜4月 24時間 海 細長 短い 66 マグロ タ:7000 ボ:5600 ジ:10500 北:11月〜4月 南:5月〜10月 24時間 海 桟橋 超特大 50回以上魚を釣る 超短い 67 カジキ タ:10000 ボ:8000 ジ:15000 北:7月〜9月、11月〜4月 南:1月〜3月、5月〜10月 24時間 海 桟橋 超特大 50回以上魚を釣る 超短い 68 ロウニンアジ タ:4500 ボ:3600 ジ:6750 北:5月〜10月 南:11月〜4月 24時間 海 桟橋 特大 20回以上魚を釣る 超短い 69 シイラ タ:6000 ボ:4800 ジ:9000 北:5月〜10月 南:11月〜4月 24時間 海 桟橋 特大 50回以上魚を釣る 超短い イエロー 70 マンボウ タ:4000 ボ:3200 ジ:6000 北:7月〜9月 南:1月〜3月 4時〜21時 海 背びれ 20回以上魚を釣る 短い 71 エイ タ:3000 ボ:2400 ジ:4500 北:8月〜11月 南:2月〜5月 4時〜21時 海 特大 20回以上魚を釣る 長い 72 ノコギリザメ タ:12000 ボ:9600 ジ:18000 北:6月〜9月 南:12月〜3月 16時〜9時 海 背びれ 50回以上魚を釣る 短い 73 シュモクザメ タ:8000 ボ:6400 ジ:12000 北:6月〜9月 南:12月〜3月 16時〜9時 海 背びれ 20回以上魚を釣る 短い 74 サメ タ:15000 ボ:12000 ジ:22500 北:6月〜9月 南:12月〜3月 16時〜9時 海 背びれ 50回以上魚を釣る 超短い 75 ジンベイザメ タ:13000 ボ:10400 ジ:19500 北:6月〜9月 南:12月〜3月 24時間 海 背びれ 50回以上魚を釣る 超短い 76 コバンザメ タ:1500 ボ:1200 ジ:2250 北:6月〜9月 南:12月〜3月 24時間 海 背びれ 20回以上魚を釣る 超長い 77 チョウチンアンコウ タ:2500 ボ:2000 ジ:3750 北:11月〜3月 南:5月〜9月 16時〜9時 海 大 20回以上魚を釣る 超長い 78 リュウグウノツカイ タ:9000 ボ:7200 ジ:13500 北:12月〜5月 南:6月〜11月 24時間 海 超特大 50回以上魚を釣る 短い レッド 79 デメニギス タ:15000 ボ:12000 ジ:22500 北:1年中 南:1年中 21時〜4時 海 小 100回以上魚を釣る 超短い 80 シーラカンス タ:15000 ボ:12000 ジ:22500 北:1年中 南:1年中 24時間 海 雨か雪の日のみ 超特大 100回以上魚を釣る 超短い.

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種田山頭火 其中日記 (八)

あつ森 七月に釣れる魚

第10章 丸沼鱒釣俱楽部のメンバーたち 2 ・・・「土方 寧」 丸沼の鱒釣り -思い出すまま- (全文 土方 寧 大正8年 について 法学博士 土方 寧 1859~1940) 東京帝国大学教授 民法学者 雑誌「釣の趣味」(大正8年9月号)収載 私が釣魚を始めたのは、恰度今から三二三年前の明治二十年頃であった。 その頃は品川湾の釣魚が今よりもずっと盛んだった。 今は隅田川の沿岸から種々な汚物が流れ寄って穢ないから、たんと出かけないが、その当時は未だ海も清潔だったし、方々から大勢釣魚者が集まって面白かったから私もよく脚立づりと云うのを遣ったものだ。 船を海の浅瀬に片寄せて積んできた脚立(折り畳むそうな仕掛になったもの)を水中に立て、それに乗り移って釣糸をたれると云う方法なのであるが、多くは梅雨の頃で、昼になると南の風が出て浅瀬が荒れ濁るから、昼間は釣れないものとされ、朝は出きるだけ早くから始めて、まづ正午前まで釣るのが一番漁があった。 で、一度釣魚に出掛けるとなると、釣る時間の短い割合に空しくその一日を潰して了〔しま〕わねばならぬつまり朝暗いうちから起きると、なると自然前の晩は殆ど眠れないし、釣魚から帰った午後も疲労と眠気とで茫乎〔ぼんやり〕して何も手につかぬと云う風でかなり、不便も感じないではなかったが、しかし、又一面から云うと、小暗い夜明前から海に出て、ひやりとした暁の海風に肌を晒しながら、四時頃になってほのぼのと水面の明ろくなるのを待って釣りはじめる、あの爽やかな心持は実に云〔なん〕とも云えない。 十月時分になると、私はよく海苔ひびの近くへ船を遣って、麦畑の畝のように立ち列〔なら〕んでいる竹垣の中間に釣糸を投げて、鯔〔ぼら〕や黒鯛を釣ったものである。 こうして、明治三十年頃まで約十年間くらい釣魚を続けたが、その後二十七年頃から鉄砲猟を始めるようになって、品川湾の釣魚はながく中絶して了った。 ところが、この鉄砲猟も明治天皇崩御の諒闇中に止めて以来、気抜けがして了って、今に出かけない。 そこで元の釣魚道楽が復活して、今日の日光丸沼の鱒つりとなったのである。 この日光の鱒つりの話をすれば、勢い現在吾々仲間の遣って居る(鱒釣り會)の由来も明らかになる訳かだら〔原文ママ。 「だから」の誤植〕、少し許〔ばか〕り思い出すままに話して見よう。 日光に遊んだ者は、誰でも湯元から中禅寺湖に注いでいる湯川を知っているであろう。 この川は蜿々〔えんえん〕と曲がり曲がって二里余りであるが、その中禅寺湖へ注ぐ川口を菖蒲浜と読んで居る。 ここに、十四五年前、当時の宮内省御料局(今の帝室林野局)の経営にかかる魚の養殖場が設けられて、湯川と湖とに鱒を放養した。 鱒の種類もいろいろあるが、この時分養殖されたのは、アメリカ産の虹鱒(Rainbow trout)と云うので、繁殖の極めて旺〔さか〕んな種族であった。 胴の両側に虹のような斑紋があるので、この名が出たのである。 かくしてこの養殖場では、湯川で一日一円、中禅寺湖で一日五十銭の料金を徴して誰にでも釣ることを許可したのである。 ところが、七年程前、鉄砲猟や釣魚の友達で、私と極く仲の善い貴族院議員の鍋島桂次郎氏が、これも外交官出で以前仏蘭西大使を勤めた栗野子爵と同伴で、この湯川へ釣りに行ったことがある。 『大変面白いところだから是非案内しよう』と私は勧められた。 恰度八月の初旬であった。 私は鍋島氏に伴われて、湯川に行って見たが。 一向に釣れない。 鍋島氏も気を揉ん。 『いや漁不漁のあることだから仕事〔原文ママ。 「仕方」か?〕がない。 しかし、何とかして小気味よく釣らせたいものだな』などなど気の毒がった。 実際初めての場所で、初めての時に釣れないことは、せっかくの弾みを抜かして了う。 氏はそれを心配したのだ。 ところが吾々は、中禅寺湖で「湯本〔原文ママ。 「湯元」か?〕から山越しで三里程行くと上州の方へ降るところに、丸沼と云う湖水がある。 その湖水へ行くと素晴らしく釣れる。 」と云う噂を耳にした。 で、吾々は直ぐにも行って見る気になった。 そのときの話では、何でも群馬県の富豪の千明氏が、水産講習所と共同してその丸沼に鱒を飼養していると云うことであったが、何しろ丸沼と云うところは、湯本へ三里、上州の人家へ三里と云う深山の無人境で、養殖場にも一棟の家がある許り、泊るに夜具もなければ、食事の用意もあるまいと云うので、吾々は出発するに先立ち、湯本まで行って、米や味噌や缶詰などを買い求めて人足に持たせさて、丸沼に向かったが、その山路の険しいことと云ったらなかった。 殆ど道らしいものとてはなく、夜の通行は無論のこと、馬さえ歩行の出来ないところを、或は荊棘〔いばら〕を繰〔くぐ〕り、或は乗り越えつ、或は匍〔は〕いつして、漸く目的地に着いたが、この時は千明氏の令閨がどこでか私どもの企てを聞いて出迎いにまで出て下さったので兵糧-宿泊までの用意万端心を用いて要がなくなった。 早速その湖水に釣糸を垂れたが、釣れること、釣れること、実に面白かった。 湯川の不漁をここで十分に償って、私達は喜び勇んで帰京した。 この愉快な釣りに味をしめて、その翌年で鍋島氏と語って丸沼へ行った。 今度も却々〔なかなか〕の漁があった。 で、東京倶楽部の一員たる鍋島氏はこの吉報を齎〔もた〕らして、倶楽部員間に吹聴したので「そりゃ面白いぜひ釣りに行こう」と云う人が続々と出た。 終に、釣魚仲間が出来、同志語って日光の鱒釣り會を作ったのであった。 これが新聞などで大袈裟に噂されるようになったのだが、つまりは鍋島氏と私とが丸沼に探検的な釣りを試みたのがそもそもの動機で、足掛三年目にこの會の成立となったのである。 鱒釣會の會員は、始め十幾人で、今村繁三氏、赤星鉄馬氏、西園寺八郎氏、伊集院子爵(今は退会)飯島魁氏、鍋島桂次郎氏と私などであった。 會員の中には釣魚に初心な人もあって、西洋流の釣竿を英国へ注文するやら、特別注文の竿を名題の職人に誂〔あつら〕えるやら、皆大いに弾み出した。 が未だ行かぬ人もある。 憲政会総裁の加藤男も會長と云うことになって居るが、往復に日数を要するところから、激務に寸暇なく、まだ一度も行かぬが、何しろ金のある人々の集りだから、その後丸沼の魚釣場には、種々の設備が出来て、近頃は頗る便利となり、したがって釣りも盛んになって来た。 會が出来てから恰度七年になる。 會員も増加して今では二十幾人になった。 岩崎小弥太男、古河虎之助氏なども入會している。 一昨年は「宿が一陳では不便だから」と云うので、今村氏と赤星氏とが協力して、更に一陳、家を丸沼に新築することになった。 その建築用の木材は、千明氏の寄附で、持山の生木を伐ったものである。 各年〔原文ママ。 「昨年」か?〕年の暮に、その新築が成った。 一万三千円からの経費をかけた立派な家で、温泉も引こうと云う計画もあったようだ。 今では主として今村氏が會の世話を焼いて呉れている。 何時かも氏が態々〔わざわざ〕東京から料理人を連れて来て山中とは思えぬ贅沢な食事を調理させたりした。 が、余り贅沢すぎるので、その後は湯本の板屋と云う温泉宿の主人に托して、あまり贅沢でない。 野趣のある料理をつくらせて食べた。 七月八月を漁期として、會員は随時避暑かたがた釣りに行ける こう云う訳で、今では万事万旦便利になって、頗る結構は結構だが、釣魚の趣味から云えば、寧ろ不便でも閑寂で野趣の漲った気分の方が貴いと云う者もある。 この丸沼には目下虹鱒のほかに姫鱒と云う日本種の鱒が居るこの姫鱒は食膳に上して頗る美味であるが、あまり弘〔ひろ〕く生存しない。 今では方々にこの種の鱒を飼養している。 秋田県の十和田湖にも盛んに繁殖させているが、先年丸沼に虹鱒を繁殖させていた技手が、北海道の或る湖から、この姫鱒を丸沼に移して放養したので、今では虹、姫二種の鱒が釣れる、訳であるが、この人が最近栃木県庁の技手になって赴任したので、その後任者がいないのに困っている。 この技手は頗る特志な人で十年近く丸沼に止まって鱒の養殖に従事したのだが、虹鱒の卵を撒くのは極寒で、雪の山籠りの侘しさは並大抵でない丸沼は何処へも交通が杜絶えるのであるから、余程の特志家でないと辛抱が出来ない訳で、未だに志望者を得ない始末である交通杜絶で思い出したが、最初私達が行路難を感じた山路は、その後會員が據金して修繕したので、今では夜間も提灯があれば歩けるし、馬で踏み入ることも出来るし、危険はなくなったことに先年北白川宮が吾々の鱒釣りを許可〔おみみ〕にせられ、御微行で丸沼にお越しになった時、県庁の方で倉皇〔きょこう〕として道路の修理にかかったので、吾々は今思わぬ余慶を蒙って非常に喜んでいる、北白川宮の御来臨のあった時は、英国で盛んに練習して来たかばり釣りの名人鍋島桂次郎氏が御同乗申して、小舟で湖水を乗り廻し、更に七八間離れて、私が別の舟で投げ釣りを試みたが、その日は一向に食わなかった。 その前日から宮様の御来臨を仄聞した吾々は、湖を荒らさずに置いた甲斐もなく、生憎なことであった。 天候気温の加減で、余程漁に違いがあるので、何とも致し方がなかった。 吾々の鱒釣りの根拠地丸沼の外に、菅沼、瓢箪沼と云うのがあるから一寸紹介しよう。 湯本から山越えで一里余進むと山頂に金精峠と云うのがある。 栃木県と群馬県との境で、海抜約五千幾百尺、この峠を下ると海抜五千尺位の処に菅沼がある。 更らに下ると件の丸沼があり、丸沼から二十間位の長さの掘割のような谷川に続いて下の方に瓢箪沼がある、菅沼は丸沼より三四倍の大きな湖で姫鱒がいる。 千明氏が網で捕らせて日光の街へ売り出している。 瓢箪沼も丸沼より大きい湖だが、鯉や鮒などは居るが、草の多い所為で鱒はいない。 尚釣魚の出来る谷川では大瀧川と云うのがある。 湯川よりも大きく、目下この川一里あまりは手続を済まして釣りの占有権を持って漁番をしている。 しかし釣り者にとって面白いのは、何と云っても丸沼でことに虹鱒のかばり釣りである。 丸沼のは前述のように虹鱒と姫鱒との二種がいるが、この姫鱒と云う奴は殊に川を嫌って湖水を好み、それもずっと深みにいる會員の一人飯島氏は動物学者の立場から、「この姫鱒は鱒と云ううち、鮭に近いもので、多分海から湖水へ流れ上って来て、海へ下れずして湖に居残ったものだろう」その推測を下しているが、兎に角この鱒は深みにいるから餌を沈めて釣る、跳ね回って却々〔なかなか〕荒れる魚であるが、釣りのなぐさみから云えば虹鱒に如かぬ。 虹鱒は川を好み、水面に浮いて来る魚で、かばりで釣る、殊に蝶や蛾や蟲類を巧妙に鈎に細工した。 西洋式のかばりで釣ると、一段の趣きがある。 湖水の場合は小舟で湖上に乗り廻して、かばりを十間位先へ投げる、竿は一間半にも足らず、なまりもないのに、投げ方がうまいと、いくらでも遠方へ鈎が飛んで行く。 その投げ方の巧拙に面白味がある上に、水面に浮いて来た虹鱒の鈎にかかるのが舟の上から見られるし、かかつた魚を手許の糸捲で、糸を捲いて引き寄せる間の興味もあって、却々に趣きの深いものである。 今年の夏は私は、丸沼に十日許り逗留して土方久徴氏と倶に釣ったが大漁で、一日に百幾匹も釣った。 今村氏、飯島氏、田中氏(前満鉄理事)なども行ったまた今度巴里の講和会議の晴の舞台から帰った西園寺八郎氏も却々熱心な會員で、九月に行くと云って居る段々に會の旺んになるのは結構なことだ。 何しろ、丸沼は深山の別天地で、東京市中で九十度に昇る酷暑の日も、この地は七十度位のもので、空気が乾燥して涼しく、随って蚊も居なければ虱〔原文では「のみ」のルビあり〕も居らぬ。 好箇の健康地と云って差支えない。 今村氏の云う如く、真に繁忙な実業家が俗事を忘れて、命の洗濯とするのに、この山中の釣魚くらいいいものはないと思う。 本書は、雑誌「釣の趣味」大正8年9月号に寄稿されたもの。 著者の死後50年経過により著作権期間が満了。 全文を掲載。 なお、原文はルビで読み仮名がふられているが読みが困難なものを除き原則として省略した。 また、旧漢字・旧仮名使いを適宜現代文に改めている。 土方寧 民法・イギリス法学者。 土佐(高知県)に安政6年2月12日生まれ。 1859-1939 明治-昭和時代前期の法学者。 東京大学法学部を卒業した。 民法を専攻し,イギリスに留学。 1883年(明治16)同大学の助教授となり、1887年にはイギリスに留学し、バリスター(法廷弁護士)の資格をとった。 1891年帰国し、教授に進み、1925年(大正14)までその職にあった。 民法典編纂(へんさん)以後の、わが国におけるイギリス法研究の代表的存在とされる。 また、1885年には、英吉利法律学校(イギリスほうりつがっこう)(現在の中央大学)の創立に力を尽くした。 明治24年帝国大学教授となり,44年東京帝大法科大学長。 英法の研究に道をひらいた。 18年開校の英吉利 イギリス 法律学校 現中央大 の創立者のひとり。 大正11年貴族院議員。 昭和14年5月18日死去。 81歳。 1939年(昭和14)北支派遣軍慰問中、天津(てんしん)に客死した。 著書に『英国契約法』(1887)、『英国流通証券法』(1888)がある。

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【あつ森】7月の魚一覧

あつ森 七月に釣れる魚

清丸さんに ・こゝのあるじとならう水仙さいた ・こゝに舫うてお正月する舳をならべ 坊ちやん万歳 ・霜へちんぽこからいさましく 霜晴れの梅がちらほらと人かげ ・耕やすほどに日がのぼり氷がとける 足音、それはしたしい落葉鳴らして(友に) ・みんないんでしまへばとつぷりと暮れる冬木 ・ふけてひとりの水のうまさを腹いつぱい 一月十一日 晴、あたゝかい。 朝、浜松飛行隊へ入営出発の周二君を駅に見送る、周二君よ、幸福であれ。 前の菜畑のあるじから大根を貰ふ、切干にして置く、大根は日本的で大衆的な野菜の随一だ。 よい晩酌、二合では足りないが三合では余ります。 うたゝね、宵月のうつくしさ。 周二君を送る三句 落葉あたゝかう踏みならしつゝおわかれ ・おわかれの顔も山もカメラにおさめてしまつた ・おわかれの酒のんで枯草に寝ころんで ・甘いものも辛いものもあるだけたべてひとり 枯草を焼く音の晴れてくる空 ・枯木に鴉が、お正月もすみました 送電塔が、枯れつくしたる草 私の懐疑がけふも枯草の上 時間、空間、この木ここに枯れた 一月十二日 いつもより早く、六時のサイレンで起きる。 物忘れ、それは老人の特権かも知れない、私も物忘れしてはひとりで微苦笑する。 餅と酒とを買ふ、餅もうまいし酒もうまい。 酔うた、酔うたよ、二合の酒に。 …… 夜はさびしい風が吹きだした、風がいかにさびしいものであるかは孤独生活者がよく知つてゐる。 うれしいたより、これあるがゆえに私も生きてゆける。 昨夜の食べすぎ飲みすぎで今日一日苦しんだ、やつぱりつゝしむべきは口である。 つゝましく生活せよ、私の幸福はそこにある。 一月十五日 雨、曇。 終日終夜、読書思索。 深夜の来庵者があつた、酔樹明君とI君、どこへいつても相手にされないのでやつてきたといふわけ、管を巻くことはやめにして寝てもらつた! 一月十六日 曇、初雪。 早朝、樹明君がしほ/\としてかへつてゆく、酔つぱらつた人間もみじめだが、酔ひざめの人間はさらにみじめだ! うれしいたより、井師から麻布の佃煮を頂戴した、さつそく昨夜の酒を燗して、 雪見酒といふ贅沢さ、酒もうまかつたが、佃煮はとてもおいしかつた。 佃煮といふものは 日本的情趣がある。 近頃の私は 飲むことよりも 食べることに傾いてゐる。 小米餅が見つかつたのでさつそく買つた、 まづしい田園味だ。 久しぶりに入浴、しづかなるかな身も心も。 此頃は巻煙草よりも刻煙草が好きになつた、しかも なでしこのどろくさいのが! 炬燵で読んだり考へたりしてゐるうちに、いつしか夜が明けてしまつた。 …… ・雪もよひ雪となつた変電所の直角形(改作) ・おもひでがそれからそれへ晩酌一本 ・雪あかりのしづけさの誰もこないでよろしい 子をおもふ ・わかれて遠いおもかげが冴えかへる月あかり ・あの人も死んださうな、ふるさとの寒空 ・あすは入営の挨拶してまはる椿が赤い ・おわかれの声張りあげてうたふ寒空 ・ひつそり暮らせばみそさざい ・ぬけた歯を投げたところが冬草 一月十九日 雪へ雪ふる寒さ、「寒」も変態的から本格的となつた。 今日が一番冬らしい冷たさだつた、吹く風もまさに凩。 非常に労れた、私はぢつとして 余生を終る私でしかないことが解つた。 ぐつすり寝た、 熟睡のありがたさ、それは近頃にないうれしいめぐみだつた。 一月二十日 晴、四五日来の 暗雲がすつかり消えた。 今日はDさんSさんKさんが来庵する日である、何はなくとも火をおこし、炬燵をぬくめておかう。 友あり……と庵主の心境である。 三寒四温といふ、その一温といふお天気である。 街のポストまで出かけて、ついでに豆腐を買うてくる。 餅粥はうまいな。 ……Dさんはとう/\来なかつた、SさんもKさんも来なかつた、…… 私は待つてはゐたけれどアテにはしてゐない(アテにしてゐるとアテがはづれたとき腹が立つ)。 来者不拒、去者不追、私は私一人で足るだけの 生活情調を持つてゐる。 今夜もようねむれるこころよさ。 ・明けてくる物みな澄んで時計ちくたく ・はなれたかげはをとことをなごの寒い月あかり ・けさの雪へ最初の足あとつけて郵便やさん ・とぼ/\もどる凩のみちがまつすぐ ここに家してお正月の南天あかし たまたま落葉ふむ音がすれば鮮人の屑買ひ 緑平老の愛犬ネロが行方不明となつたと知らされて二句 ・冬空のどちらへいつてしまつたか ・ 犬も ( ネロも )ゐなくなつた夫婦ぎりの冬夜のラヂオ 一月廿一日 曇、時雨、晴。 目白の群がおとなしく椿の花に遊んでゐる。 山頭火は其中庵に、 其中庵の山頭火だ。 ねた、ねた、十三時間ねた。 …… ・寒 ン空のとゞろけばとほくより飛行機 ・爆音、まつしぐらに凩をついて一機 ・飛行機がとんできていつて冴えかへる空 ・けふもよい日の、こごめ餅こんがりふくれた 戯作一首 世の中に餅ほどうまいものはない すいもあまいも噛みしめる味 一月廿五日 霜晴れ、のどかな日かげ。 午前、街へ出かけて、払へるだけ払ひ、買へる物だけ買ふ。 午後、また出かけて駅までゆく、いろ/\の用事を思ひだして山口へ、そして鈴木さんを訪ねる、頼む事は頼んで、御馳走を頂戴した、帰途湯田で入浴、温泉にひたつてゐる心持は徃生安楽国だ! 帰庵したのは十時だつた、労れた、々々々。 一月廿七日 晴、そして曇。 …… 待つてゐる……何を……待つてゐる……まづ 郵便を……そして……友人を。 …… 偉大一升借りる、鰯十尾買ふ。 午後、樹明君約をふんで来庵、お土産は餅、ボタ餅がないのが残念だつたが。 気持よく飲んで酔うて、さよなら。 今日、駅のポストまで出かけたついでに、ライスカレーを食べた、O食堂のそれは肉めし程度、さらにK食堂のそれはうまかつた、とにかく私は 私の胃袋に祝福をさゝげます! 一月廿八日 晴れてあたゝか、すこし歩く。 畑仕事、すぐ労れてダメ、情ないかな。 ようねむれることは何よりのよろこびだ。 一月廿九日 曇、冷たい、小雪ちらつく。 たよりいろ/\、うれしいうれしい。 寒い、鯖のさしみで一杯。 ちかごろの私の句作傾向はわるくないと思ふ、 一日一句でたくさんだ、その一句を磨いて磨いて磨きあげるのである、そこに私の性格があり生活があると思ふ。 私は今日から 郵便貯金を始めた、一日十銭を節約するのである(バツトをなでしこに、酒三合を二合にといふ風に)、そしてそれは私の 死骸かたづけ代となるのである。 今日はからだのぐあいがよつぽどよかつた。 身も心も欲しがる酒、さういふ酒だけ飲むべし。 一月三十一日 晴曇、ずゐぶん冷たい。 明方やつと眠りついたと思つたら、恋猫のために眼覚めさせられた、いがみあひつゝ愛し、愛しあひつゝいがむのが、彼等の此頃の仕事だ、 どうすることもできない本能だ。 旧正月まへ ・こゝろたのしくてそこらで餅をつく音も ・更けてひとり焼く餅の音たててはふくれる ・みぞれする草屋根のしたしさは 霜晴れの、むくむくと土をむぐらもち ふるつくふうふういつまでうたふ 改作 ほつと夕日のとゞくところで赤い草の実 二月朔日 晴。 もう二月になつた。 …… ぶら/\歩いて、酒と魚とを買うて戻つた。 何となく腹工合が悪い、嫌な夢を見た。 今日は一句もなかつた、それでよろしい。 二月二日 曇、ばら/\雨。 緑平老からの手紙まことにありがたし。 梅の花ざかり、そこらを歩くとほのかに匂ふ、椿の花も咲きつゞけてうつくしい。 樹明君に招かれて、夕方から学校の宿直室へ出かける、酒と飯とをよばれる、すこし飲みすぎて心臓にこたえて苦しんだが、しばらくして快くなつた、とうとう泊つた、しかし一睡も出来なかつた、勝太郎の唄をラヂオを聴いた、いろ/\の雑誌を読みちらした。 睡れないなら睡れるまで睡らないでよろしい。 高声は山ゆきすがたの着ぶくれてゐる 寒い朝の、小鳥が食べる実が赤い 曲ると近道は墓場で冷たい風 ・寒い裏から流れでる水のちりあくた ・南無地蔵尊冴えかへる星をいたゞきたまふ ・恋猫が、火の番が、それから夜あけの葉が鳴る 雪でもふりさうな、山の鴉も寒さうな声で 二月三日 曇、雪もよひ、寒い冷たい、時雨。 暗いうちに昨夜食べ残した御飯を食べて帰庵、すぐ炬燵をあたゝかくして読書。 まだ徹夜なら一夜二夜は平気だ、御飯も二三杯、餅なら五つ六つは何の事はない(酒は三合飲むと飲みすぎて苦しくなるが)。 私としては出来るだけの御馳走をこしらへて、来庵するといふ樹明君を待つ。 …… 今日読んだものの中に、渇魚、渇地獄、渇極楽といふ言葉があつた、味ふべき言葉だと思つた、 地獄の底の極楽を泳ぐ魚(魚にあつては地獄であらう、人間に釣りあげられるから)。 樹明来、さつそく飲む、下物は焼小鯛、玉葱のぬた、 黒 ( マヽ )布の佃煮、いづれも庵独特の手料理。 急用ができて樹明君は早々帰つて行つた、奥さんがわざ/\迎へに来られたので何とも致し方がない。 …… ・雪へ雪ふる小鳥なきつれてくる ・雪がふるふる火種たやすまいとする ・雪のなか高声あげてゆきき ・枯木の雪を蹴ちらしては百舌鳥 ・雪ふるゆふべのゆたかな麦飯の湯気 ・雪、街の雑音の身にちかく 雪の大根ぬいてきておろし 雪をふんで郵便やさんがうれしいたよりを ・雪をかぶつて枯枝も蓑虫も ・雪ふれば雪のつんではおちるだけ ・あなたの事を、あなたの餅をやきつつ(樹明君に) 雪のふりつもるお粥をあたためる ・いちにち胸が鳴る音へ雪のしづくして ・ぶらりとさがつて雪ふるみのむし ・雪つまんでは子も親も食べ 朝のひかりのちりあくたうつすりと雪 ・春がちかよるすかんぽの赤い葉で ・雪をたべつつしづかなものが身ぬちをめぐり ・をとことをん ご ( マヽ )といつたりきたりして雪 ・雪のあかるさの死ねないからだ 井師筆の額を凝視して 雪あかりの「其中一人」があるいてゐるやうな 二月八日 曇、消え残る雪の寒さ。 少々風邪気味で、咳が出て洟水が出るけれど、約束通り山口へ行く、先づ湯田の温泉に浸る、それから市中を散歩する、本屋を素見したり、山を観たりして、夕方、周二居を訪ねる、おとなしい句会であつた、三輪さん、山廷さん、そして奥さん、人数は少ないけれど熱心があつた、終列車で帰庵、十二時近かつた、それから火をおこし炬燵をあたゝめ、湯を沸かし餅を焼いて、食べて、そしてゆつくり寝た、独身者はなか/\忙しかつた。 今日は寒かつた、坐つてゐても歩いてゐても冬を感じた、多分此季節中では、今日が厳寒であらう。 今日はまことに よい日であつた。 山口で 外郎一包を買つた、明日徃訪する白船老への土産として。 S奥さんの温情にうたれた、尊敬と信頼とに値する女性として。 さしみもうまいが ちりもうまい、 あつさりして、そして コクがある。 ヒレ酒なんかは問題ぢやない。 酒の酔と鰒の熱とが からだいつぱいになつてとろ/\する心地はまさに羽化登仙である、生命なんか惜しくない、ほかに生命なんかないぢやないか! 二月九日 曇。 天気模様もよくないし、からだのぐあいもよくないけれど、思ひ立つては思ひ返さない私だから、時計を曲げて汽車賃をこしらへ、徳山へ行く。 福川で下車して歩るく、途中富田で青海苔を買ふ、降りだしたのでバスに乗る。 白船君とは殆んど一年ぶりの対談。 夜は雑草句会、例によつて例の如し。 白船居は娘さんが孫を連れて同居してゐられるので、或る宿屋へ案内して泊めて貰ふ、すまなかつた、何もかも人絹のピカ/\するなかで寝る。 今夜はよく食べた、自分ながら胃袋の大きいのに呆れた。 …… 友はよいかな、旧友はことによいかな。 奥さんに嫁の事を頼んで、さんざヒヤカされた。 ・雪ふれば雪を観てゐる私です ・ひとりで事足るふきのとうをやく ・孤独であることが、くしやみがやたらにでる ・雪がふるふる鉄をうつうつ ・火の番そこからひきかへせば恋猫 ・更けて竹の葉の鳴るを、餅の焼けてふくれるを 改作一句追加 ・焼いてしまへばこれだけの灰が半生の記録 木郎第二世の誕生をよろこぶ 雪あかりの、すこやかな呼吸 二月十日 雨。 よく寝た、雨で八代の鶴見物は駄目。 十時の汽車で帰ることにする、白船君に切符まで買うて貰つて気の毒だつた。 十二時帰庵、樹明君がやつてくる、酒井さんがやつてくる、磯部さんがやつてくる。 …… 酒四升、鰒大皿、飲めや唄へや、踊れや。 ………… とろ/\どろ/\、よろめきまはるほどに、とう/\動けなくなつて宿屋に泊つた。 ・芽麥の寒さもそこらで雲雀さえづれば ・冬ざれの山がせまると長いトンネル 冬ぐもりの波にたゞようて何の船 ここにも住む人々があつて墓場 ・家があれば田があれば子供や犬や ・雪もよひ雪にならない工場地帯のけむり ひさしぶり話せば、ぬくい雨となつた(白船老に) あれもこれもおもひでの雨がふりかゝるバスで通る 二月十一日 晴、紀元節、建国祭。 こゝろよい睡眠から覚めて、おいしい朝飯を食べて、戻つてきて、昨夜の跡片付をする。 午後、樹明君と磯部君とを招いて残肴残酒でうかれる、うかれすぎてあぶなかつたが、やつと散歩だけですました、めでたし/\。 月もおぼろの、何となく春めいた。 二月十二日 曇。 門外不出、独臥読書。 二月十三日 おなじく、おなじく。 二月十四日 曇。 今日も門外不出、終日読書。 ・いちにち雨ふり春めいて草も私も めつきり春めいて百舌鳥が啼くのも ゆふ凪の雑魚など焼いて一人 ・寝床へまでまんまるい月がまともに ・かうして生きてゐる湯豆腐ふいた 二月十九日 晴、晴、春、春。 やうやく米と炭と油とを工面した、窮すれば通ずるといふが、私の内外の生活はいつもさうである。 今宵は十六夜の月のよろしさ。 二月二十日 晴、霜も氷も春。 独り者の朝寝はよろしいな。 午後、湯屋へ出かけて、ユフウツを洗ひ流してくる。 帰途、農学校に立ち寄つて樹明君と話す、君も此頃は明朗で愉快だ。 私は酒も好きだが、菓子も好きになつた(何もかも好きになりつつある、といつた方がよいかも知れない)、辛いものには辛いもののよさが、甘いものには甘いもののよさがある、右も左も甘党辛党万々歳である。 苦労は人間を磨く、 用心すべきは悪擦れしないことである。 私の日記も書く事書きたい事がだん/\少くなつた、ここにも私の近来の生活気力があらはれてゐるといへるだらう。 ・こどもはなかよく椿の花をひらうては ・せんだんの実や春めいた雲のうごくともなく ・椿ぽとり豆腐やの笛がちかづく ・人間がなつかしい空にはよい月 やつぱり出てゐる蕗のとうのおもひで(改作) 井師筆額字を凝視しつつ ・「其中一人」があるくよな春がやつてきた(改作) 二月二十一日 なか/\寒い、霜がつめたい、捨てた水がすぐ凍るほどであるが、晴れてうらゝかで、春、春、春、午後は曇つて、夜はぬくたらしい雨となつた。 おいしい雑魚を焼いてゆつくり昼飯を食べてから近在を散歩する、春寒い風が胸にこたえるので、長くは歩けなかつたが、蕗のとうと句とを拾つて戻つた。 けふもまた誰も来なかつた、誰も来ないでよろしいけれども、淋しいなとは思つたことである。 夜は 盲目物語を読んで潤一郎芸術の渾然たるにうたれた、そして 人の一生といふものが痛感された。 一杯機嫌で、うと/\してゐるところへ、敬坊来庵、久しぶりにF屋でうまい酒を飲む、それからまた例によつて二三ヶ所を泳ぎまはる、そしてI旅館に碇泊(沈没にあらず)、まことによい とろ/\であつた!( どろ/\にあらず) ・山から水が春の音たてて流れだしてきた ・雑草あるがまま芽ぶきはじめた 二月二十三日 晴、まつたく春ですね。 公明正大なる朝帰り! 五臓六腑にしみわたる朝酒のほろ酔機嫌で! 雑魚を焼きつつ、造化のデリカシーにうたれ、同時に人間の残忍を考へないではゐられなかつた。 酒は酔を意識して、いや期待して飲んではいけない。 酔ふための酒はいけない、 味ふ酒でなければならない。 酔ひたい酒でなくて、 味ふほどに酔ふ酒でなければならない。 酒のうまさ、 水のうまさ、それが 人生のうまさでもある。 地獄に遊ぶ、かういふ生き方は尊い。 山口へ出張して、帰途また立寄るといつて別れた敬坊を待つたが、なか/\やつて来ない、樹明君から手紙がくる、宿直だからやつて来なさいといふ、夕方から出かける、例の如く飲む食べる、話す笑ふ、そして泊る、……今夜はみんな酔ひすぎて(五人共)あぶなく脱線するところだつた。 ・大石小石ごろ/\として春 夜露もしつとり春であります ・春夜は汽車の遠ざかる音も ・もう郵便がくるころの陽が芽ぶく木々 ・風がほどよく春めいた藪から藪へ ・春風のローラーがいつたりきたり ・伐り残されて芽ぶく木でたゝへた水へ 三月二日 晴。 今夜は呂竹居に泊めて貰つた、なごやかな家庭の空気がいら/\してゐる私をやはらかくつつむ、ありがたい、まことにありがたい。 三月三日 四日 五日 六日 寝てゐた、寝てゐるより外に仕方がない。 三月七日 晴。 やつと起きあがつて、句集発送。 夜半の闖入者としてK君、I君襲来。 身辺整理。 机を南縁から北窓へうつす、これも気分転換の一法である。 在るがままに在らしめ、 成るがままに成らしめる、それが私の心境でなければならない。 ・山火事も春らしいけむりひろがる ・ぬくうてあるけば椿ぽたぽた ・草へ草が、いつとなく春になつて 三月九日 春寒。 身心平安。 山口の句会へ行く、椹野川づたひに歩いて行つた、春景色、そして私は沈欝であつた、いつ訪ねても周二居はしづかであたゝかである、湯田温泉も私のかたくなにむすぼれた身心をほぐしてくれた、おいしい夕飯をいたゞいて、若い人々と話して、終列車で戻つた、まことによい一日一夜であつた。 三月十日 日露戦役三十年記念日。 すつかり春、しゆう/\として風が吹く。 奴豆腐で一本、豆腐はうまい、いつたべてもうまい、酒は時としてにがいけれど。 蛙が鳴いた、初声である、蝶々も出てきてひら/\。 こころたのしい日である。 それは苦しい、そして楽しい道である、はるかな、そしてたしかな、細い険しい道である。 白道である、それは凄い道である、冷たい道ではない。 私はうたふ、 私をうたふ、自然をうたふ、人間をうたふ。 俳句は悲鳴ではない、むろん怒号ではない、溜息でもない、欠伸であつてはならない、むしろ 深呼吸である。 詩はいきづき、しらべである、さけびであつてもうめきであつてはいけない、時として涙がでても汗がながれても。 噛みしめて味ふ、こだはりなく遊ぶ。 ゆたかに、のびやかに、すなほに。 さびしけれどもあたたかに。 人生といふものは、結果から観ると、April fool みたいなことが多からう。 友情に甘えるな、 自分を甘やかすな。 天地明朗、身心清澄。 午後、近郊を散歩する、出かけるとき何の気もなくステツキ、いやステツキといつてはいけない、杖をついたのである、山頭火も老いたるかなと思へば微苦笑物だ。 まだ風は寒いので、四時間ばかり山から野をぶらついて、途中、一杯ひつかけて戻つた。 旧街道の松並木が伐り倒されてゐる、往来の邪魔になるからだらうけれど、いたましく感じた。 酒はどうしてもやめられないから飲む、飲めば飲みすぎる、そして 酒乱になる、だらしなくなる、一種のマニヤだ、つつしまなければならないなどと考へてゐるうちに、ぐつすりとねむつた。 四月二日 晴、春風しゆう/\。 ありがたいかな、うれしいかな、たよりを貰ひ、たよりをあげる。 善哉々々、鰯で一杯。 大山君に信州のそば粉と浜松の納豆をお裾分けする、かういふ到来物は私一人で私すべきものではない、みんないつしよにその友情を味ふべきである、大山君はそれを味うてくれる人、味ふに値する人だ。 何よりも わざとらしいことはいけない、私たちは 動物的興奮を捨てゝ 自然的平静を持してゐなければいけない、しかし、…… 水のやうに、 水の流れるやうに。 すぽりと過去をぬいだ、 未来を忘れた、 今日のここ、 この身のこのまま極楽浄土だ。 ナムカラタンノウトラヤヤ。 …… ……私は此頃痛切に世のあぢきなさ身のやるせなさを感じます、それはオイボレセンチに過ぎないとばかりいつてしまへないものがあります。 今日の樹明君はよかつた、彼にくらべて私は私の心を恥ぢた、どうも酒に敗ける、酔ふとぢつとしてゐられなくなる、そして、……今日はわるくなかつたが。 人生はリズミカルに、大井川は流れ渡りだ。 花見辨当をたべてゐるうちに、ほろりと歯がぬけた、ぬけさうな歯であり、ぬければよいと考へてゐた歯であつた、何だかさつぱりした。 ぬけさうでぬけなかつた歯がぬけた、これだけでも 解脱の気分を味ふことが出来た。 自己検討、愚劣を発見するばかりであるが、その愚劣が近来やゝ 自在になつたことはうれしいと思ふ。 雑草が私に、私が雑草に、私と雑草とは一如である。 四月六日 曇。 暗いうちに朝がへり、そして朝酒。 公明正大であつた(かへりみて恥づかしくないこともないけれど、許して頂戴!)。 身辺整理。 放下着、放下着。 入浴するのも旅をするのも一つの放下着だらう。 忘れるといふことは、 たしかに放下着の或る段階だ。 今日は黎々火君が来てくれる日である、何もないからほうれん草を摘んで洗ひあげておく、待ちかねて、やうやく暮れるころになつて来てくれた、お土産はうるか一壺とさくら餅一包、さつそく大好物のうるかを賞味する、鮎の貴族的な香気が何ともいへない高雅なものをたゞよはせる。 おそくまで話しつゞける、子のやうな彼と親のやうな私、そして俳句の道を連れだつてすゝむ二人の間には、たゞあたゝかいしたしみがあるばかりである。 ・あてなくあるくてふてふあとになりさきになり ・芽ぶくものそのなかによこた け ( マヽ )る ・山のひなたの、つつましく芽ぶいてゐる ・水音の暮れてゆく山ざくらちる ・さくら二三本でそこで踊つてゐる 白い蝶が黄ろい蝶が春風しゆうしゆう さくらちる暮れてもかへらない連中に 花見べんたうほろつと歯がぬけた 四月八日 雨。 花まつりを行ふ地方はあやにくの雨で困つたらう、私は宿屋でゆつくり雨を味つた。 どうもからだのぐあいがあたりまへでない、むろんあたまのぐあいもよくないが。 夕方から、樹明君によばれて学校の宿直室へ出かける。 よい酒をよばれて、そのまゝ泊めて貰つた。 悔いのない酒、さういふ酒でなければならない。 四月九日 曇、雨、早朝帰庵。 身辺整理、捨てゝも捨てゝも捨てきれないものが、いつとなくたまつてくる。 …… 終日読書。 やつと一関透過、 むつかしい一関だつた、まことに白雲悠々の境地である。 更けて遠く蛙の声。 ・草に寝ころんで雲なし ・この山の木も石も私をよう知つてゐる 雨の小鳥がきては啼きます ・身にちかく山の鴉がきては啼きます ・春風の楢の葉のすつかり落ちた ・穴から蛇もうつくしい肌をひなたに ・ひとりで食べる湯豆腐うごく ・さくら咲いて、なるほど日本の春で ・晴れてさくらのちるあたり三味の鳴る方へ 四月十日 雨、しと/\とふる春雨である。 買ひかぶられて苦しい、どうぞ私を買ひかぶつて 下さるな。 大樹の下にを読む、小野さんといふ著者のあたゝかい、やはらかい人柄がよく解る、 情趣の人である。 大空放哉伝を読む、放哉坊はよい師友を持つてゐてありがたいことである。 夜、酒を提げて、樹明君とI君と来庵、二人は酔うて唄つたり踊つたりする、しかし私は酔へない、しやべれない、どうして唄へるものか、踊れるものか、気の毒だけれど、早く帰つてもらつて寝た。 ・新菊もほうれん草も咲くままに ・草が芽ぶいて来てくれて悪友善友 ・枇杷が枯れて枇杷が生えてひとりぐらしも ・いちにちすわつて風のながれるを ・暮れるとすこし肌寒いさくらほろほろ ・椿を垣にして咲かせて金持らしく 庵中無一物 酔うて戻つてさて寝るばかり 四月十三日 好晴。 久しぶりに、ほんたうに久しぶりに畑仕事、土を耕やし、草をぬき捨て、大小便をかけて、いつでも胡瓜や茄子やトマトや大根や、植えられるやうにして置く。 酒はあるけれど飲まなかつた、飲みたいのを飲まないのではない、飲みたくないから飲まなかつたのである、私は昨日までしば/\ 飲みたくない酒を飲んだ、酔ひたいために飲んだのである、むろん にがい酒だつた、身も心もみだれる酒だつた。 …… 私は何故死なゝかつたか、昨春、飯田で死んでしまつたら、とさへ度々考へた。 …… ・山から白い花を机に ・春寒い夢のなかで逢うたり別れたりして ・ひつそりさいてちります ・機音とんとん桜ちる ・さくらちるビラをまく ・とほく蛙のなく夜半の自分をかへりみる ・けふもよい日のよい火をたいて(澄太君に) ・伸びるより咲いてゐる 黎々火君に わかれしなの椿の花は一輪ざしに ・おくつてかへれば鴉がきてゐた 四月十四日 曇、また雨となり風が出た。 身心寂静。 ひとりしづかに自分を見詰めてゐるところへ、風雨の中を酒が来た、しばらくして樹明君とSさんとがやつてきた、ニベと胡瓜とを持つて。 まづ樹明君が酔ふ、Sさんも、酔ふたらしい、私は酔へない、酔ひたくない、ほどよく別れて、寝床に入つたが、どうしてもねむれない、起きてまた飲んで、そしてお茶漬を食べた、おかげでぐつすりねむれた。 ・藪かげ藪蘭の咲いて春風 ・空へ積みあげる曇り ・雨が風となり風のながるゝを ・水音ちかくとほく晴れてくる木の芽 ・みんな咲いてゐる葱もたんぽぽも ・なんでもかんでも拾うてあるく蛙なく(鮮人屑ひろひ) ・もう葉ざくらとなり機関車のけむり ・うどん一杯、青麦を走る汽車風景で ・風がつよすぎる生れたばかりのとんぼ ・山ふところわく水のあればまいまい 四月十五日 曇、めつきりぬくうなつた。 去年の今日をおもふ、飯田で病みついた日である、 死生の境を彷徨しだした今日である。 アルコールの誘惑! その誘惑からのがれなければならない、いや、アルコールに誘惑されないほどの、不動平静の身心を練りあげなければならない。 アルコールの誘惑と 酒のうまさとは別々である。 柿の芽がうつくしい、燕の身軽さよ。 塩ほど必要でそして安価なものはない、同時に、酒ほど贅沢で高価なものはない、といへる。 腹は酒でいつぱいになつた、しかも酔へない、何といふ 罰あたりだらう、悲惨だらう。 しづかに飲む、おのづから酔ふ、山は青くして水の音、鳥が啼きます、花が散ります、あああ。 湯田温泉三句 ・わいてあふれる湯のあつさ汗も涙も ・湯あがりぼんやり猿を見てゐる人々で ・お猿はのどか食べる物なんぼでもある(ナ) ・ぽつかり月が、逢ひにゆく ・うらゝかな硯を洗ふ ・芽ぶく曇りの、倒れさうな墓で ・草のうらゝかさよお地蔵さまに首がない(ナ) ・こんな山蔭にも田があつて鳴く蛙 ・夕日いつぱいに椿のまんかい 四月十七日 曇、后晴。 小鳥は た ( マヽ )えづる、よろこびそのものであるやうに。 午後山口へ、まず湯田で一浴、それから市中を歩きまはつて、労れた胃の腑へ熱燗でおでんを入れる。 暮れて帰庵、お茶漬を食べてから読書。 だん/\落ちついてくる、根本的に身心整理をする時機が来たのである。 酒は酒、水は水、それでよろしいのですが、私の場合では酒が水にならないとよろしくないやうです(養老の孝子の場合では、水が酒になりましたが!)。 四月二十日 晴、さてもうらゝかな。 今日も歩いた、陶から鋳銭司へ、そして秋穂まで、野も山も人も春たけなはだつた。 入浴、そして晩酌、とてもよかつた。 陰暦の三月十八日、裏山の観音堂は賑やかである、地下の人々が男も女も年寄も子供もみんないつしよに、御馳走をこしらへて食べるのである、いはゞ里のピクニツク、村の園遊会である。 かういふ風習はなつかしい、うれしいもよほしであるが、それも年々さびれて、都会並の個人享楽にうつつてゆく、なげいたところで時勢のながれはせきとめることもできない。 昨日も今日も一句も出来なかつた、出来さうとも思はなかつた、長らく悩んだ結果として、私の句境は打開されつゝあるのである。 四月二十一日 晴、そとをあるけば初夏を感じる。 昨日は朝寝、今朝は早起、それもよし、あれもよし、私の境涯では「物みなよろし」でなければならないから(なか/\実際はさうでもないけれど)。 しづかなるかな、あたゝかなるかな。 午後、歩いて山口へ行つた、帰途は湯田で一浴してバス、バスは嫌だが温泉はほんたうにうれしい、あふれこぼれる熱い湯にひたつてゐると、 生きてゐるよろこびを感じる。 晩酌一本、うまい/\、明日の米はないのに。 私はまさしく転換した、転換したといふよりも常態に復したといふべきであらう、 正身心を持して不動の生活に入ることが出来たのである。 ・ふるつくふうふうわたしはなぐさまない(ナ) ・ふるつくふうふうお月さんがのぼつた ・ふるつく ふうふとないてゐる (ふるつくはその鳴声をあらはすふくろうの方言) ・照れば鳴いて曇れば鳴いて山羊がいつぴき ・てふてふもつれつつ草から空へ(ナ) 四月廿二日 晴れたり曇つたり、また雨か。 けさも早起、しかも米がない。 大根と唐辛とを播く。 せめて今日一日を正しく楽しく生きたい。 米がなくては困るので、学校に樹明君を訪ねて、Sさんから句集代を貰うて貰ふ。 山口まで歩いた、途中、湯田競馬見物、一競馬見たら嫌になつた、そこには我慾が右徃左徃してゐるばかりだ、馬券がとぶばかりだ、馬を鑑賞する、いや、 賭そのものを味ふことすらないのだ、勝負事の卑しい醜い一面しかないのだ。 帰途、新町の馴染の酒店で味淋一杯のお接待を頂戴した、小母さんは眼が悪い、そして今日明日はお大師様の御命日である。 学校に寄つて、夕飯を御馳走になつた、そしてほどよく酔うてしやべつて、戻つて寝た。 秋穂のお大師めぐりがしたいのだけれど銭が足りないので、また湯田温泉へ行つた。 もう初夏らしい風である、歩けばすこし暑いが、しづかにをれば申分のない季節である。 うれしいものは毎日うけとるたよりである、今朝は山形から珍らしいかき餅を貰つた、ありがたいことである。 ほどよい疲労とうまい晩酌と、そしてこゝろよい睡眠。 湯田競馬、追加一句 ・勝つてまぶしく空へ呼吸してゐる ・誰も来てはくれないほほけたんぽぽ ・爆音はとほくかすんで飛行機 ・ふるさとの学校のからたちの花 ・ここに舫うておしめを干して初夏の風 ・晴れて帆柱の小さな鯉のぼり ・暮れてなほ何かたたく音が、雨がちかい ・ひとりたがやせばうたふなり(ナ) 四月廿四日 晴。 近在散歩。 澄太君に返事の手紙を書いた、緑平居訪問の同行を断つたのである、それはまことに 一期一会ともいふべき よろこびであり、同時に かなしみではないか、君のあたゝかい心、そして私のかたくなな心、私は書いてゐるうちに涙ぐましくなつた。 …… 若楓のうつくしさ、きんぽうげのうつくしさ。 季節の焦燥、人間の憂欝、私の彷徨。 ……澄太君といつしよにお訪ねすることが出来ないのを悲しみます、無理に出かければ出かけられないこともありませんけれど、それは決してあなた方を快くしないばかりでなく、必らず私を苦しめます、どうぞお許し下さい。 ……何故、私は小鳥たちのやうにうたへないのか、蝶や蜂のやうにとべないのか、蟻のやうにうごけないのか、……私は今、自己革命に面してゐます、一関また一関、ぶちぬきぶちぬかなければならない時機に立つてゐます。 ……自己克服、いひかへれば過去一年間の、あまりに安易な、放恣な、無慚な身心を立て直さなければなりません、……アルコールでさへ制御し得なかつた私ではなかつたか。 …… 松蝉がしきりに鳴きだした、あの声は春があはたゞしく夏へいそぐうただ。 半日、椹野川堤で読書、一文なしでは湯田へ行けないから。 身辺整理、むしろ心内整理。 門外不出、終日読書。 四月二十七日 曇、少雨。 ずゐぶん早く起きたが、何もない! 火! よい火を焚け、そしてよい酒を飲め。 K氏を訪ねて、句集代を頂戴した、それでやつと米が買へた。 …… かういふ生活には(私のやうな生活にはといはなければなるまいが) 苦悩と 浪費とがたえない、苦悩はもとより甘受するが、浪費にはたへられない、浪費そのものよりも 浪費する心が我慢しきれなくなる。 物質の浪費、身心の浪費、ああ。 夕方、久しぶりにT子さんが来て、しばらく話して帰つた、彼女はわがまゝな、そして不幸な女だ、我儘がなくなれば幸福になれるのだが、恐らくは駄目だらう。 何日ぶりかで、奴豆腐をたべた、淡々として何ともいへない味はひだ、水のやうに、飯のやうに。 鼠がやつてきてゐるらしい、さすがに春だと思ふ、彼もやがて去るだらう、庵主が時々餓ゑるぐらゐだから、鼠もやりきれなくなるだらう。 一歩一歩が生死であつた。 生きてゐたくない、死ぬるより外ないではないか。 白い薬が、逆巻く水が私の前にあるばかりだつた。 五月廿四日 あんたんとして横臥してゐるところへ、敬君が見舞に来てくれたが、私は応接することすら出来ないほど、重苦しい気分をどうすることも出来なかつた。 息詰るやうな雰囲気に堪へ切れないで敬君は街へ出かけていつた。 不眠徹夜。 たんぽぽのちりこむばかり誰もこない 蛙げろ/\苗は伸びる水はあふれて 青葉をくぐつて雀がこどもを連れてきた 青葉の、真昼の、サイレンのながう鳴る 改作二句 ・けふは飲める風かをるガソリンカーで(山口へ) ・草へ草がなんとなく春めいて 五月廿五日 敬君から態人が呼出の手紙を持つてきたが、とても出かけられるやうな身心ではない。 敬君よ、許して下さい。 今夜も不眠徹夜。 五月廿六日 晴。 身心やゝ安静。 思ひ立つて、起き上つて、掃除、洗濯、等々。 樹明君が来てくれた、敬君脱線のことなど話してゐると、思ひがけなく黎々火君が来た、三人で一杯やる、友はうれしいな酒はうまいな。 黎君帰る、つゞいて樹君も帰る、私は袈裟を持ち出して、さらに飲んだ。 やりきれないのである、飲んでもやりきれないけれど、酒でも飲まずにはゐられないのである、そしてとうたう宿屋に泊つた。 ・山から山へ送電塔がもりあがるみどり 山の青さをたたへて水は澄みきつて 日ざかり萱の穂のひかれば ・のぼつたりさがつたり夕蜘蛛は一すぢの糸を ・酔ひざめの闇にして螢さまよふ 衣更 ・ほころびを縫ふ糸のもつれること 五月廿七日 曇、そして雨。 海軍記念日、大旗小旗がへんぽんとしてうつくしい。 たとへ一箇半箇でも、私は私の句を打出したい。 午後、ぼんやりしてゐると、樹明君が酒井さんと同道して来庵、間もなく酒と肴とが持ち来されたが、何となく誰も愉快になれなかつた、私はやたらに飲んで饒舌つた。 いつもより早く解散した、私は経本を持ち出して、飲み直さずにはゐられなかつた、そして酔ひつぶれて、いつもの宿屋へころげこんだのである。 ああ、ああ、ああ。 一、焼酎(火酒類)を飲まないこと 一、冷酒を呷らないこと 一、適量として三合以上飲まないこと 一、落ちついてしづかに、温めた醇良酒を小さい酒盃で飲むこと 一、微酔で止めて泥酔を避けること 一、気持の良い酒であること、おのづから酔ふ酒であること 一、後に残るやうな酒を飲まないこと 六月一日 晴。 やうやくにして平静をとりもどした、山頭火が 山頭火の山頭火にかへつたのである。 大山君から、益洲老師講話集「大道を行く」頂戴、さつそく読む。 本来無一物、その本心に随順せよ。 いよ/\ます/\ 句作道精進の覚悟をかためる、この道を行くより外ない私である! 六月二日 午前は山をあるく、山川草木そのまゝでみなよろし。 午後は来書の通りに樹明君来庵、酒と魚とを持参して、そしてほどよく酔うて話して寝て、こゝろよくさよなら、めでたし/\。 自己観照、 自己批判。 無理のない生活、さういふ生活の根源は 素直な心である。 簡素、質実、感謝、充足、安心。 ・ゆふべしたしくゆらぎつつ咲く(月草) ・おみやげは酒とさかなとそして蝿(樹明君に) ・何を求める風の中ゆく ・若葉あかるい窓をひらいてほどよい食慾 青葉のむかうからうたうてくるは酒屋さん 風ふく竹ゆらぐ窓の明暗 風の夜の更けてゆく私も虫もぢつとして 六月三日 曇。 けさも早起。 午後は風雨が強くなつた、哀傷たへがたいものがある、……風雨を衝いて街へ出かける。 Fで樹明君に会して飲む、……それから泥酔してIに泊つた。 …… 六月四日 晴。 やつぱり酒はよろしくないと思ふ、それがうまいだけそれだけよろしくないと思ふ。 散歩、上郷八幡宮の社殿で読書、帰途入浴、連日の憂欝が解消した。 六月五日 曇。 旧の端午、追憶の鯉幟吹流しがへんぽんとして泳いでゐる。 今日も近郊散歩。 松笠風鈴を聴きつつ ・風鈴鳴ればはるかなるかな抱壺のすがた ・やもりが障子に暮れると恋の場面をゑがく ・たたへた水のをり/\は魚がはねて ・柿の若葉に雲のない昼月を添へて ・うたうとするその手へとまらうとする蝿で(雑) 六月十一日 晴。 飲む酒はないが読む本はある、ぢつとしてゐられるだけの食べる物もある。 …… 梅雨入前らしく少し曇つて降つた。 在るものを味ふ。 六月十二日 晴、入梅。 とても好いお天気、すこし風はあるが、一天雲なしで、青空の澄んだ深い色は何ともいへないうつくしさである。 読書にも倦んでそこらを散歩、Iさんから在金全部十九銭借りる、さつそく酒一杯ひつかける、煙草を買うたことはいふまでもない。 いやな風がふく、風はほんたうにさびしいものである。 らしい生活、それは無論第二義的第三義的なものであるが、それを持続してゆくうちに第一義的に向上することが出来るのではあるまいか。 老人は老人らしく、貧乏人は貧乏人らしくせよ、いひかへれば、気取らずに生活せよ、すなほに正直に振舞へ。 貧乏はよろしい、けちけちするな、真面目は結構、くよくよしてはいけないが。 ・柿の若葉が、食べるものがなくなつた ・空腹、けふのサイレンのいつまでも鳴り ・うつてもうたれても蝿は膳のそば(雑) ・かついでおもいうれしい春の穂 ・焼かれる虫の音たてて死ぬる ・暮れるとしぼむ花草でてふてふの夢 ・花に花が、てふちよがてふちよに ・梅雨めく雲でぬけさうなぬけない歯で ・雑草ほしいまゝなる花にして 雑草しげり借金ふえるばかり ・ゆふ風ゆうぜんとして蜘蛛は待つ ・若葉から若葉へゆふべの蜘蛛はいそがしく ・ふと眼がさめて風ふく 改作 ・ひよつこり筍ぽつきりぬかれた 六月十三日 晴、空 ラ梅雨らしい。 早起、これも老の特徴だらう、こんなに早起しようとは思はないけれど、眼が覚めると寝てはゐられないのである。 朝御飯を食べてゐるとき、ほろりと歯がぬけた、ぬけさうでぬけなかつた歯である、ぶら/\うごいて私の神経をいら/\させてゐた歯である、もう最後のそれにちかい歯である、その歯がぬけたのだからさつぱりした、さつぱりしたと同時に、何となくさびしく感じる、一種の空虚を感じるのである。 午前中読書、しづかなるよろこび。 午後散歩、帰庵すると珍客が待つてゐた、詩外楼君が突然来庵してくれたのである、樹明君を招いて飲む、酔うて歩く、そしてとろとろどろどろ、連れて戻つて貰うて、いつしよに寝る、近来めづらしいへべれけぶりだつた、それだけ嬉しくのんびりしたのでもある! ・空 ラ梅雨の風のふく歯がぬけた ぬけた歯を投げ捨てて雑草の風 ・ぬけるだけはぬけてしまうて歯のない初夏 ・花がひらいて日が照つてあそぶてふてふ ・めづらしく誰かくる雑草の見えがくれ ・おもふことなく萱の穂のちる ・こゝも墓らしい筍が生えて ・歯のぬけた日の、空ふかい昼月 六月十四日 晴。 とても早く起きる。 詩外楼君と同道して徳山へ、久しぶりに白船君と会談、そして東へ西へお別れ。 私は一時の汽車に乗つた、途中三田尻下車、伊藤君を訪ね、それから三田君を訪ねてまた飲んだ、鯛の刺身のあたらしさ、うまさは素敵だつた、それと同様に三田君の人間のよさも(家人一同のよさも)素敵だつた、暮れてお暇乞して、散歩して、シネマを観て、酒垂山の月を賞して、夜明けの汽車でやつと帰庵した。 めづらしく裏山で狐が鳴いてゐた。 ・雑草に夜明けの月があるしづけさ ・笹のそよぎも梅雨らしい雨がふりだした あたゝかく日がさすところよい石がある ・五月の海は満ちて湛へて大きな船 故郷にて ・螢ちらほらおもひだすことも 六月十五日 晴れたり曇つたり、梅雨らしく。 遊びすぎたのでがつかりした、自戒をやぶつて冷酒をあほつたので、破戒の罰はてきめんで身心がうづくやうである。 湯田へ出かけて熱い温泉に浸る、あゝ極楽、夕方帰庵して一杯飲んですぐ寝た、熟睡、夢も見なかつた安らかさだつた。 今日、途上で、とても 美しいお嬢さんを見た、さつそうとして洋装の長身がアスフアルトを踏んでゐる、そして同時に、とても 醜い娘さんを見た、彼女は日傘で顔を隠して、追はれて逃げるやうに、隅の方を通る。 …… 私はあんぜんとして溜息をついた。 ・水かげも野苺のひそかなるいろ ・おちてしまへば蟻地獄の蟻である ・雑草につつまれてくちなしの花は ・赤いのはざくろの花のさみだるる ・とても上手な頬白が松のてつぺん ・草を咲かせてさうしててふちよをあそばせて 赤蛙さびしくとんで(改) 酔ひざめの風がふく筍(その翌朝) 酔ひざめは、南天の花がこぼれるこぼれる 六月廿二日 曇。 田植のいそがしい風景。 ……蝿を殺す、油虫を殺す、百足を殺す、蜘蛛を殺す、……そしておしまひには私自身を殺すだらう!…… あまり予期してゐなかつた酒が魚が持ち来された(一昨日、幸便に托して、山田屋主人に酒と魚を借りたいといふ手紙をあげてをいたのであるが)、さつそく飲んだ(五日ぶりの酒であり魚であつた)、快い気分になつて、学校に樹明君を訪ねて来庵を促した(そして米と野菜とを貰つて)、それからまた飲んだ、飲んで街へ出た、ひよろひよろになるまで飲んだ、ちようど私の不在中訪ねて来て、私を探し歩いてゐる敬君に逢うて。 …… 二時すぎて、やつと戻つた、すぐ寝た。 六月廿三日 くもり。 快い宿酔! そこらをしばらく散歩。 樹明、百円札で山頭火をおどす! これは昨日の出来事であつた、近来にない明々朗々たる珍現象であつた! Y屋のMさんが例の如くやつてきて話す、郵便物を托送する。 終日待つた、待ちぼけだつた、敬君も来なければ樹君も来なかつた。 蠅捕紙(連作風に) 蝿は蝿の死屍をつらね 死にきれない蝿の鳴いてもがけども やつと立ちあがつたが、脚がぬけない蝿で鳴く ひよいととまつてそのまゝ死んでしま う ( マヽ )蝿 蝿、とんできて死んでゆく 六月廿八日 雨、とても降つた。 雨は天地がぬけるほど降つたし、私は身心が腐るほど寝た。 …… 六月廿九日 曇、また降りだした。 午後、敬君に招かれてFへ行く、蝙蝠傘事件をきつかけにHの狡猾を責めつけてやつた、日頃の溜飲はさがつたけれど不愉快だつた、早く切りあげて帰庵した。 六月三十日 よく降るものだ、降つた降つた。 樹明君、二日酔のからだを持てあまして来た、そして一日寝て帰つた。 濁流たう/\、非常を知らせるサイレンが陰にこもつて鳴りだした。 …… 即時而真 当相即道 生々如々 春有百花秋有月 夏有涼風冬有雪 若無閑事挂心頭 便是人間好時節 七月一日 曇、また降りだした。 身心一新、さらに 新らしい第一歩から。 すなほな、とらはれない行持。 午前ちよつとしようことなしに街のポストまで、出水の跡がいたましい。 いつもの癖で、今日もなまけた、原稿も書かなかつたし、書債も償はなかつた、書くべき手紙も書かなかつた。 …… 二つの出来事があつた、それは私の不注意を示す好例だつた、質屋で誤算のままに利子を払ひすごしたこと、そしてうつかりしてゐて百足に螫されたこと。 注文しておいた酒をとうとう持つてきてくれなかつた、失念したためか、信用がないためか、……どちらでもよろしい、……酒に囚はれるな。 私がここに落ちついてから、そして行乞しなくなつてから、いつとなく私は 横着になつたやうだ、事物に対して 謙虚な心がまへをなくしてしまつたやうである、あさましい事実だ、私は反省しつゝ、ひとり冷汗をかいた。 何となく寝苦しかつた、ペーターのルネツサンスに読みふけつた。 七月二日 けふもまだ降つてゐる。 こころしづかにしておもひわずらふことなし。 …… 雨水がバケツにたまつて水を汲まなくてもすむ、汚れた鍋や茶碗や、みんな雨が洗つてくれる。 やつと書債文債をかたづける。 アルコールの逆流。 梅雨もどうやらあがりさうな雷鳴。 七月七日 八日 九日 晴、曇。 身心不調、蟄居乱読、反省思索。 七月十日 曇。 こゝろしづかにさびしく澄みわたる。 やまぐちの会へ出かける、途上、老乞食に逢ふ、彼と私とは五十歩百歩だ、いつものやうに湯田で入浴、ああ温泉はありがたい、Sさんのお宅でよばれる、うまかつた、それから句会、Kさん、Hさん、Aさんの青春をよろこぶ。 終列車には間にあはなかつた、飲む、飲みだしたら泥酔しなければおさまらない私の悪癖だ、とう/\Y旅館へころげこんだ。 ・自動車まつしぐらに炎天 ・木かげは涼しい風がある旅人どうし 若葉の中からアンテナも夏めく ・それはそれとして草のしげりやうは 湯田温泉 夏山のかさなれば 温泉 ( ユ )のわくところ ・おもひでの葉ざくらのせゝらぐ ・さびしがりやとしてブトにくはれてゐます 七月十一日 曇、混沌として。 またSさんのお世話になつた、ああ。 …… 朝から夜まで、酒、シネマ、酒、シネマ。 やうやくにして終列車で帰庵。 七月十二日 十三日 寝てゐるほかない、自分を罵るほかない。 七月十四日 晴れたか、曇つたか。 別れてからまた飲んだ、今夜の酒はほんとうに 恥づかしい酒、 命がけの酒だつた。 ・蝉もわたしも時がながれてゆく風 ・はなれてひとりみのむしもひとり それをくれた黎々火君に ・草はしげるがままの、かたすみの秋田蕗 ・彼のこと彼女のこと蕗の佃煮を煮つつ ・月がいつしかあかるくなればきりぎりす(雑松) ・それからそれへ考へることの、ふくろうのなきうつる ゆふべいそがしく燃えてゐる火のなつかしく(途上) 七月二十日 曇、しめやかな雨となつた。 夕方から、招かれて学校へ行く、樹明君宿直である、例によつて御馳走になる、六日ぶりの酒肴である、おそくなつたので、勧められるまゝに泊つた、食べすぎて寝苦しかつた。 歯のぬけた口で茹章魚を食べビフテキを食べるのだから自分ながら呆れる、むろん噛みしめることは出来ないからほんたうには味へない。 ・蛙なく窓からは英語を習ふ声 ・最後の一匹として殺される蝿として 殺した藪蚊の、それはわたしの血 しんみり風に吹かれてゐる風鈴は鳴る ・やつとはれてわたくしもけふはおせんたく(雑) どこかでラヂオが、ふくろうがうたふ 豆腐やの笛がきこえる御飯にしよう おくれた薯を植えいそぐ母と子と濡れて 七月廿一日 曇、蒸暑い、雨。 早朝帰庵、身辺整理。 即興詩人と 梅干老爺! それを考へてひとり苦笑する、それが事実であるだけそれだけ、笑ひたいやうで笑へない。 夢! 夢は自己を 第二の自己として表現して見せてくれるものだ、私は近頃よく夢を見る、毎夜の夢が毎日の私を考へさせる。 前隣のSさんの息子が来て草を刈つてくれた、水を汲むことが、おかげで、 楽 ( ラク )になりました。 晴れて土用らしく照りつける、今年最初の、最高の暑さだつた。 また徹夜だ、人間として(彼が 出来てゐる人間ならば)、食べるものがまづいとか、夜眠れないとかいふことがあるべき筈はない、私は 罰せられてゐるのだ。 冬村君を久しぶりに工場に訪ねる、夫婦共稼ぎの光景である、彼等は父母と仲違ひして別居してゐる、こゝにも人生悲劇の場面が展開されてゐるのである。 昨日の酒があつまつてゐるので、朝酒昼酒そして晩酌、ありがたいことだ。 人のなさけを感じること二度。 番茶を味ふ、トマトを味ふ。 今日は土用丑の日、とうとう鰻には縁がなかつた、鰻よりも鮎を食べたいのだが。 秋茄子三本、秋胡瓜三本を植ゑる、この価五銭、あんまり安すぎる。 白船老との会食、酢鮹の話。 七月二十五日 快晴、土用日和。 かん/\照りつけるので稲が喜んでゐる、百姓が喜んでゐる、私も喜んでゐる、みんな喜んでゐる。 今日も酒があつた、茄子があつた、トマトがあつた、私にはありがたすぎるありがたさである。 茶の本(岡倉天心)を読みかへした、片々たる小冊子だけれど内容豊富で、教へられることが極めて多い本である。 即興詩人(森鴎外訳)も面白い、クラシツクのよさが、アンデルゼンのよさが、鴎外のよさが私を興奮せしめる。 私は 空想家だ、いや 妄想家だと思つたことである、今日にはじまつたことではないが。 遠く蜩が鳴いた、うれしかつた、油虫が私を神経衰弱にする、憎らしい。 また徹夜してしまつた、心臓が痛くなつて、このまゝ死ぬるのではないかと思ふたが、大したことはなかつた、そして 私の覚悟は十分でない、私といふ人間は出来てゐないことを考へさせられた。 酔うて管を巻く、安易な気持だ。 早起、朝酒、九時の下りで九州へ。 門司駅一二等待合室にて黎々火君を待ち合せ、岔水君をよびよせてもらつて、アイスクリームを食べつゝ会談。 関門風景はいつもわ く ( マヽ )るくない。 入浴、私の体重十四〆弐百、折から安売の玉葱に換算すればまさに壱円四十弐銭の市価(二等品で一〆十銭だから!)。 丸久食堂の隣席はきつと結婚見合、この結婚不成立と観たは僻目か、女の方が男よりもづう/\しかつた。 をなごやの鏡子居にをなごと寝ずにひとり泊る。 八幡は煙突が多い、食べものやが多い、女が多い、ウソもカネも多いだらう! 小郡駅待合室 汽車がいつたりきたりぢつとしてゐない子の暑いこと ・ふるさとの或る日は山蟹とあそぶこともして 飲めるだけ飲んでふるさと ・酔うてふるさとで覚めてふるさとで ・ふるさとや茄子も胡瓜も茗荷もトマトも ・急行はとまりません日まはりの花がある駅 ・風は海から冷たい飲みものをなかに 七月二十八日 晴れて暑い。 温柔郷の朝はおそい、十一時近くなつて四人連れでバスで松の寺へ。 もつたいなくも本堂の広い涼しいところで会食、酒、ビール、てんぷら、さしみ、お釈迦さんもびつくりなすつたらう、観音さまはいつもやさしい。 かいめ、くさびといふ魚、水桃もおいしかつた。 海水浴風景、さういふ風景と私とはもはや縁遠くなつた。 浜万年青、一名いかりおもと、それを愛して俊和尚が植えひろげてゐる。 私の句碑(松はみな枝たれて南無観世音)の前で撮影、私も久しぶりに法衣を も ( マヽ )とうた。 私一人滞在、寺の夜はしづかだつた。 岔水居 したしく逢うてビール泡立つ 或る旧友と会して ・寝顔なつかしいをさな顔がある 朝ぐもり海へ出てゆく暑い雲 八月二日 朝酒はありがたい、もつたいない。 岔水君に送られて下関へ。 下関では飲み歩いた、饒舌り散らした、とう/\黎々火君の厄介になつた。 シネマは面白かつた。 小遣も興味もなくなつたので、駅の待合室で一夜を明かした。 八月三日 早朝帰庵。 愉快な旅の一週間だつた、友はなつかしい、酒はおいしい、ビールもよろしい、鮎も好き、……労れて、だらけて、こんとんとして眠つた。 八月四日 ぼう/\ばく/\。 関日の波多君が小学校の先生二人を同伴して来庵、アイスキヤンデーをかぢりながら暫時雑談、今日は私の 雑草哲学を説く元気もなかつた。 死に直面して [#「死に直面して」は罫囲み] 「 死をうたふ」と題して前書を附し、 第二日曜へ寄稿。 ・死んでしまへば、雑草雨ふる ・死ぬる薬を掌に、かゞやく青葉 ・死がせまつてくる炎天 ・死をまへにして涼しい風 ・風鈴の鳴るさへ死はしのびよる ・ふと死の誘惑が星がまたたく ・死のすがたのまざまざ見えて天の川 ・ 傷 ( キズ )が癒えゆく秋めいた風となつて吹く ・おもひおくことはないゆふべ芋の葉ひらひら ・草によこたはる胸ふかく何か巣くうて鳴くやうな ・雨にうたれてよみがへつたか人も草も 八月十五日 晴、涼しい、新秋来だ。 徹夜また徹夜、やうやくにして身辺整理をはじめることができた。 五十四才にして五十四年の非を知る。 憔悴枯槁せる自己を観る。 遠く蜩が鳴く。 風が吹く、蒼茫として暮れる。 くつわ虫が鳴きだした。 胸が切ない(肺炎の時は痛かつた)、狭心症の発作であるさうな、そして心臓痲痺の前兆でもあるさうな(私は脳溢血を欣求してゐるが、事実はなか/\皮肉である)。 灯すものはなくなつたが、月があかるい。 徹夜不眠 ・ほつと夜明けの風鈴が鳴りだした ずつと青葉の暮れかゝる街の灯ともる ・遠く人のこひしうて夜蝉の鳴く ・踊大鼓も澄んでくる月のまんまるな ・月のあかるさがうらもおもてもきりぎりす ・月あかりが日のいろに蝉やきりぎりすや 米田雄郎氏に、病中一句 ・一章読んでは 腹 ( おなか )に伏せる「青天人」の感触 八月十六日 晴れて涼しい。 今日も身辺整理、手紙を書きつづける。 昨夜もまた一睡もしなかつた、少し神経衰弱になつてゐるらしい、そんな弱さではいけない。 午後、樹明君、敬治君来庵、酒と汽車辨当を買うて、三人楽しく飲んで食べて話した、夕方からいつしよに街へ出かけてシネマを観た(トーキーでないので、せつかくのヱノケンも駄目だつた)、それから少し歩いて、めでたく別れた。 十一日ぶりのアルコール、いやサケはとてもうまかつた。 私にはもう 性慾はない、 食慾があるだけだ、 味ふことが生きることだ。 青葉かげお地蔵さまと待つてゐる 蟻の行列をかぞへたりして待つ身は暑い バスのほこりの風にふかれて昼顔の花 ・炎天下の兵隊としてまつすぐな舗道 行軍の兵隊さんでちよつとさかなつり ・釣りあげられて涼しくひかる ・水底の太陽から釣りあげるひかり ・ゆふなぎおちついてまた釣れた 八月十九日 晴、朝晩の涼しさよ、夜は冷える。 身辺整理。 今日も手紙を書きつゞける(遺書も改めて調製したくおもひをひそめる)、Kへの手紙は書きつつ涙が出た。 ちよつと学校へ、やうやくなでしこ一袋を手に入れる。 人生は味解である、人生を味解すれば苦も楽となるのだ。 よき子であれ、 よき夫(或は妻)であれ、 よき父であれ、それ以外に よき人間となる常道はない。 これこそ私の本音である。 十七日ぶりに入浴、あゝ風呂はありがたい、それは 保健と享楽とを兼ねて、そして安くて手軽である。 からだがよろ/\する、しかしこゝろはしつかりしてゐるぞ、油虫め、おまへなんぞに神経を衰弱させられてたまるか、たゝき殺した、踏みつぶした。 また不眠症におそはれたやうだ、ねむくなるまで読んだり考へたりする、……明け方ちかくなつて、ちよつとまどろんだ。 釣は逃避行の上々なるものだ、魚は釣れなくとも句は釣れる、句も釣れないでよい、 一竿の風月は天地悠久の生々如々である、空、水、風、太陽、草木、そして土石、虫魚、……人間もその間に在つて無我無心となるのである。 私は釣をはじめやうと思ふ、 行乞と魚釣と句作との三昧境に没入したいと思ふ。 しかし今日はその第一日の小手調べであつた、樹明君は魚を釣り私は句を釣つた、同時に米も釣つたのである。 山羊髯! その髯を私は立てはじめたのである、 再生記念、 節酒記念、 純真生活記念として。 八月十日を転機として、いよいよ節酒を実行する機縁が熟した(絶対禁酒は、私のやうなものには、生理的にも不可能である)、今度こそは酒に於ける私を私自身で清算することが出来るのである。 アルコール中毒、そして狭心症、どうもこれが私の死病らしい、脳溢血でころり徃生したいのが私の念願であるが、それを強要するのは我儘だ、あまり贅沢は申さぬものである。 颱風一過、 万物寂然として存在す、それが今の私の心境である。 卒倒が私のデカダンを払ひのけてくれた、まことに 卒倒菩薩である。 ひとりはよろし、ひとりはさびし。 油虫よ、お前を憎んで殺さずにゐない私の得手勝手はあさましい、私はお前に対して恥ぢる。 八月二十日 曇。 朝夕の快さにくらべて、日中の暑苦しさはどうだ。 酒にひきづられ、友にさゝえられ、句にみちびかれて、こゝまで来た私である、私は今更のやうに酒について考へ、句について考へ、そして友のありがたさを(それと同時に子のありがたさをも)、感じないではゐられない。 …… 待つてゐた句集代落手、さつそく麦と煙草とハガキと石油を買ふ。 古雑誌を焚いて、湯を沸かすことは(時としては御飯を炊くこともある)、何だか わびしいものですね(さういふ経験を持つてゐる人も少くないだらう)。 蝉がいらだたしく鳴きつづける、私もすこしいらいらする、いけない/\、落ちつけ/\。 ・放たれてゆふかぜの馬にうまい草(丘) ・ひらひらひるがへる葉の、ちる葉のうつくしさよ 逢ひにゆく袂ぐさを捨てる ・誰かくればよい窓ちかくがちやがちや(がちやがちやはくつわ虫) 病中 ・寝てゐるほかないつく/\ぼうしつく/\ぼうし(楠) ・トマト畠で食べるトマトのしたたる太陽 ・つくつくぼうしがちかく来て鳴いて去つてしま う ( マヽ ) 八月廿一日 晴。 初秋の朝の風光はとても快適だ、身心がひきしまるやうだ。 どうやら私の生活も一転した、自分ながら転身一路のあざやかさに感じてゐる、したがつて句境も一転しなければならない、天地一枚、自他一如の純真が表現されなければならない。 此頃すこし堅くなりすぎてゐるやうだ、もつとゆつたりしなければなるまい、 悠然として酒を味ひつつ山水を観る、といつたやうな気持でありたい。 生を楽しむ、それは尊い態度だ、酒も旅も釣も、そして句作もすべてが生の歓喜であれ。 友よ、山よ、酒よ、水よ、とよびかけずにゐられない私。 八月十日の卒倒菩薩は私から 過去の暗影を払拭してくれた、さびしがり、臆病、はにかみ、焦燥、後悔、取越苦労、等々からきれいさつぱりと私を解放してくれた。 …… ・餓えてきた蚊がとまるより殺された ・草にすわつて二人したしく煙管から煙管へ ・ずうつと電信棒が青田風 ・ぼんやりしてそこらから秋めいた風(眼鏡を失うて) ・すすき穂にでて悲しい日がまたちかづく ・ゆう潮がこゝまでたたへてはぶ草の花 ・つきあたれば秋めく海でたたへてゐる 旅中 ・こんやはここで、星がちか/\またたきだした ・寝ころぶや知らない土地のゆふべの草 ・旅は暮れいそぐ電信棒のつく/\ぼうし ・おわかれの入日の赤いこと 八月廿二日 曇、だん/\晴れて暑くなつた。 今日も身辺整理、文債書債を果しつつ。 机上の徳利に蓮芋の葉を活ける、たいへんよろしい、 芋の葉と徳利と山頭火とは渾然として其中庵の調和をなしてゐる。 方々から見舞状、ありがたし/\。 天たかく地ひろし、 山そびえ水ながるゝ感。 K店員が立ち寄つて昼寝をする。 花売老人が来て縞萱を所望する、七十三才だといふ、子はないのか、孫はないのか、彼を楽隠居にしてあげたい。 昨夜も今夜も少々寝苦しい、時々狭心症的な軽い発作、読書しないで思索をつゞけた。 いつからとなく、裏に蟇が来て住んでゐる、彼とはすぐ友達になれさうだ、私には似合の友達だ。 卒倒してからころりと生活気分がかはつた、現在の私は、まじめで、あかるくて、すなほで、つつましくて、あたたかく 澄んで湛へてゐる、ありがたいと思ふ。 こうろぎがはつきりうたひだした。 八月廿四日 朝は曇つて厄日前の空模様だつたが、おひ/\晴れた。 早起、といふよりも寝なかつた。 まだ身辺整理が片付かない、洗濯、裁縫、書信、遺書、揮毫、等、等、等。 農学校に樹明君を訪ねて、切手をハガキに代へて貰ふ。 身心ゆたかにして、 麦飯もうまい、 うまい。 畑を耕して菜を播く準備をして置く、土のよろしさと自分のよわさとを感じる。 夕方、樹明君がやつてきて、佐野の親戚へお悔みに行くから、いつしよに行かうといふ、OK、駅へ行く、六時の電車が出るまでにはまだ三十分ある、Y屋で一杯ひつかける、佐山では手早く用事をすまして、停留場まで戻つてくると、一時間ばかり早い、そこでまた駅前の飲食店で一本二本、小郡へ帰着したのが九時、もう一度飲むつもりで、ぶら/\歩きまはつたが、気に入つた場所が見つからないので、けつきよく、そのまゝ別れて戻つた、めでたし、めでたし。 久しぶりの酒と散歩とがぐつすり睡らせてくれた。 八月廿五日 晴。 けさはとても早起、夜が明けるのを待ちかねた、まるで四五才の小供のやうに。 卒倒以来、心地頓に爽快、今日は特に明朗だつた。 午後、ぼんやりしてゐるところへ、ひよつこり黎坊が来てくれた、うれしかつた、反古紙を探して私製はがきを 窮製して方々の親しい人々へ寄書をしたりなどして、しんみりと夕方まで遊んだ。 やうやく、眼鏡を買ふことが出来た、古い眼鏡は度が弱くて霞の中にゐるやうだつたが、これで夜の明けたやうに明るくなつた。 このごろまた多少神経衰弱の気味、恥づべし、恥づべし。 雨はしみじみする、ことに秋の雨は。 八月廿六日 晴、残暑がなか/\きびしい。 朝、山萩の一枝を折つてきて机上をかざつた。 午前、街へ行く、払へるだけ借金を払ふ、借金は第三者には解らない重荷であるだけ、それだけ払ふてからの気持は軽くて快いものである。 いよ/\遊漁鑑札を受けた、これから山頭火の釣のはじまり/\! アイをひつかけるか、コヒを釣りあげるか。 山東菜を一畝ほど播く。 しづかにして、すなほにつつましく。 青唐辛の佃煮をこしらへる。 午後はとても暑かつたが、米買ひに、豆腐買ひに、焼酎買ひに、街へまた出かけた。 夕立がやつてきさうだつたが、すこしバラ/\と降つたが、とうとう逃げてしまつた。 どうも寝苦しい、妙な嫌な夢を見る。 …… ぐうたら手記 釣心、句心、酔心。 「 道心の中に衣食あり」頭がさがつた、恥づかしさと心強さとで汗が流れた、私の場合では 道心を句心と置き換へてもよからう。 惜花春起草、愛月秋眠遅、かういふ気持も悪くない。 八月廿七日 晴、秋となつた空にちぎれ雲。 天地悠久の感、事々無礙、念々微笑の境地。 黙壺君からの来信、その中には友情が封じ込まれてあつた。 …… さつそく、湯田の温泉に遊ぶことにする。 暑い、銭がある、理髪する(女がやつてくれたが、男よりも女の方がやさしくて念入で、下手上手にかゝはらない私にはうれしかつた)、バスがゆつくりしてゐる。 …… 温泉は熱くて豊富で、広くて、遠慮がなくて、安くて、手軽で、ほんたうによろしい。 町を歩いて、嫌とも気のつくことは キヤンデー時代だといふことだ、こゝにもそこにもキヤンデー売店、そしてあの児もこの人もキヤンデーをしやぶつてゐる。 買物いろ/\、銘酒二合買うて戻ることも忘れなかつた。 生ビールもうまいが、燗酒はもつと、もつとうまい。 拾五銭のランチも私には御馳走だ。 更けて帰庵、涼しい風が吹きぬける。 風がだん/\強くなる、どこかは暴風雨だらう。 夢にまで見た 魚釣第一日の予定は狂つてしまつた、どこへも出かけないで読書。 酒屋の小僧さんが空瓶とりにきて、小さい不快事を残していつた。 風の中のきりぎりす、蝉、こほろぎがとぎれ/\に鳴く、私もその中の一匹だらう。 油虫、油虫、昼も夜も、こゝにもそこにもぞろ/\、ぞろ/\、私は油虫を見るとぞつとする、強い油虫、そして弱い私! 山羊髯がだいぶ長くなつた、ユーモアたつぷりである、これが真白になつたらよからう、今では胡麻塩、何だか卑しい。 柚子を見つけて一つもぐ、香気ふくいくとして身にしみる、豆腐が欲しいな。 何としづかな、おちついた日。 夕焼の色が不穏だつた、厄日近しといふ天候。 ・風はほしいまゝに青柿ぽとりぽとり ・風がわたしを竹の葉をやすませない ・立ち寄れば昼ふかくごまの花ちる ・くづれる家のひそかにくづれるひぐらし(丘関) ・よしきりなく釣竿二つ三つはうごく ・暮れいそぐあかるさのなかで釣れだした 遊園地 ・お猿はうららか食べるものなんぼでも(改作) ・ゆふべすずしく流れてきた絵が桃太郎(丘関) ・石を枕にしんじつ寝てゐる乞食 ・誰かきたよな声は蜂だつたか ・ここにもじゆずだまの実のおもひで ・こころいれかへた唐辛いろづく 庭隅の芭蕉よみがへりあたらしい葉を 誰かを待つてゐる街が灯つた 八月廿九日 曇、微雨、そして晴。 私自身でも釣に行くつもりだつたし、樹明君からも誘はれたので、正午のサイレンを聞いて出かける、椹野川尻の六丁といふ場所へ、そして樹明君とも出逢ふ、川は釣れないから沼へ行く、ぼつ/\釣れる、日が傾いて今から釣れるといふ頃、私だけ先きに帰る、途中で六時のサイレンが鳴つた、帰つてすぐ料理、ゆつくりと焼酎の残りを味ひ、たらふく麦飯を食べた。 釣場へ徃復二里あまり、四時間あまり釣つたので、ほどよく労れて睡ることが出来た。 九月一日 雨。 大山君を昨日から待つてゐたのだが、仕事の都合で五日の朝訪ねるといふハガキがきたので、がつかりした、五日の朝よ、早く来れ、早く五日の朝となれ。 辛うじて質屋の利子を払ふ。 大根一本三銭也。 柚子の香気うれし。 何と賑やかな虫の合奏だらう。 嫌な、嫌な夢を二つも続けて見た、……寝苦しかつた、……醜い自分を自分で恥ぢた。 あの日のことを考へると、自分のだらしなさがはつきり解る。 …… あの場合、私がほんたうにしつかりしてゐたならば、私は復活更生してゐなければならなかつたのである。 あれから十三年、私はいたづらに放浪し苦悩し浮沈してゐたに過ぎないではないか。 九月一日、私はこゝで、 最後の正しい歩調を踏み出さなければならない。 『 物みな我れに可 か ( マヽ ) らざるなし』 九月三日 曇、さすがに厄日前後らしい天候。 食べる物がなくなつた、今日は絶食して 身心を浄化するつもりで、朝は梅茶三杯。 露草の一りん二りん、それも私の机上にはふさはしい。 このごろの蚊の鋭さ、そして蝿のはかなさ。 午前は郵便やさんを待ちつつ読書。 今日の 行乞相はすこし弱々しかつたが上々だつた、私としては満点に近かつた。 ぢつと自分を省みて考へてゐると、過去がまるで遠い悪夢のやうである、明日の事は考へない、私は 今日の私を生かしきればよいのである。 病秋兎死君から最初の来信、それはうれしいかなしいさびしいものだつた。 雄郎和尚からヱハガキと 詩歌八月号。 清臨句集、 黎明、これは亡児記念としての句集で、用紙は大 版 ( マヽ )若狭紙、りつぱなものであるが、誤植が比較的に多いのは惜しかつた。 夕方、庵のまはりをぶら/\歩いてゐると、蜘蛛の囲に大きな黒い蝶々がひつかゝつて、ばた/\あえいでゐた、よく大人も小供もかういふものを見つけると、悪戯心や惻隠心から、その蝶々を逃がしてやるものである、蝶々は助かるが蜘蛛は失望する、私はかういふ場合には 傍観的態度をとる、さういふ 闘争は自然だからである、 蝶の不運、そして 蜘蛛の好運、所詮免かれがたい万物の運命である、……しかし後刻もう一度、その蝶々に近づいて、よく見ると蜘蛛はゐない、蝶々がいたづらに苦しんでゐるのである、私は手を借してやつた、蝶はすつと逃げた、雑草の中へひそんだ、思へば運命は奇しきものである、彼女の幸福はどんなだらう。 宵から ぐつすり寝たので早く眼が覚めて、夜の明けるのが待ち遠しかつた、これも老人の一得一失だらう。 桔梗の末花を徳利に す、これが山桔梗だといいのだが。 蓮芋を壺に活ける、これも水芋だとうれしいのだけれど。 小雨がふる(まつたく秋雨だ)、今日の托鉢はダメかな、お客さんにあげる御飯がないのだが。 火を燃やしつつ、いつでも火といふものを考へる、乞食はよく火を焚くといふ、火はありがたい、焚火はたまらなくなつかしいものだ。 街の子が来て、なつめをもいだ。 大根を播く、今日はまことに種蒔日和だ。 暮近く、敬治君ひよつこり来庵、渋茶をすゝりながら暫時話す、暮れてから、誘はれて(あまり気はすゝまないが、敬治君にはすまないが)、いつしよにFへ行つて飲む、ほどよく酔うて、更けて戻つた。 「 その矩を踰えない」 私であつたことは何よりもうれしい、 私はとうとう私自身に立ちかへることが出来たのだ、 私はやうやう本然の私を取りかへしたのだ。 東の空が白むのを待ちかねて起きる。 今日は大山さんが来てくれる日。 浴衣一枚では肌寒く、手がいつしか火鉢へいつてゐる。 待つ身はつらいな、立つたり坐つたり、そこらまで出て見たり、……正午のサイレンが鳴つた、すこしいらいらしてゐるところへ、酒屋さんが酒と酢とを持つてきた、そして間もなく大山君が、家嶋さんがにこ/\顔をあらはした、……五ヶ月ぶりだけれど、何だか遠く離れてゐたやうだつた。 …… 豆腐はいつものやうに大山さんみづからさげてきたけれど、実は其中庵裡無一物、米も醤油も味噌も茶も何もかも無くなつてゐることをぶちまける(大山さんなればこそである)、大山さん身軽に立ちあがつてまた街へ出かける、そして米と醤油とシヨウガと瓜と茄子と海苔とを買つてきてくれた、さつそく さかもりがはじまる、うまい/\、ありがたい/\(家嶋さんは最初だから、多少呆れてゐるやうだつた)、酒はある、下物もある、話は話しても話しても尽きない、友情がその酒のやうにからだにしみわたり、室いつぱいにたゞよふ、まつたく幸福だ。 料理は文字通りの精進だつた、そしてとてもおいしかつた。 雑草の中へ筵をしいて、二人寝ころんだところを家嶋さんがパチンとカメラにおさめた。 家嶋さんからは、 竹の葉の茶のことを教へてもらつた( 笹茶と名づけたらよいと思ふ)。 間もなく夕暮となる、そこらまで見送る、わかれはやつぱりかなしい、わかれてかへるさびしさ。 大山さん心づくしの一瓶、それは醗酵させない葡萄液である、滋養豊富、元気回復の妙薬ださうである、この一瓶で山頭火はよみがへるだらうことに間違はない、日々好日だけれど、今日は 好日の好日だつた、合掌。 もう一項附記して置きたいことがある、庵としての御馳走は何もなかつたが、雑草を見て貰つたこと、 一鉢千家飯を食べて貰つたことは、私としてまことにうれしいことであつたのである。 黎々火君に ・月へ、縞萱の穂の伸びやう 澄太君に ・待ちきれない雑草へあかるい雨 伸びあがつて露草咲いてゐる待つてゐる そこまで送る夕焼ける空の晴れる ・あんたがちようど岩国あたりの虫を聴きつつ寝る 改作 ・秋風の、水音の、石をみがく(丘) ・機関庫のしづもれば昼虫のなく ・これが山いちじくのつぶらなる実をもいではたべ(門) ・風ふく草の、鳴きつのる虫の、名は知らない ・つく/\ぼうしいらだゝしいゆふべのサイレン ・厄日あとさきの物みなうごく朝風 九月六日 晴。 さびしいけれどしづやかで。 読んだものの中から (木曽節) 月の出頃と約束したに 月は山端にわしやここに (伊那節) 葉むら若い衆よう来てくれた さぞや濡れつら豆の葉で 九月八日 風、風、風。 しづかに読書しつつ、敬君を待つ。 ちよつと農学校へ行く、樹明君は出張不在、Oさんに、敬君来庵の約束を托言して、すぐ戻る、ついでに新聞を読ませて貰つた。 いつからとなく野鼠がやつて来てゐるらしいが、食べる物がないので、昨夜は新らしく供へた仏前のお花を食べてしまうてゐる、私は(そして仏さまも)微苦笑する外なかつた。 油虫だつて同様だ、食べる物がないものだから、マツチのペーパーを舐めてゐる、それには糊の臭があるとみえて。 待つても待つても、敬君は来ない、待ちくたびれて、洗濯したり、畑に肥料をやつたり。 雑炊、佃煮。 孤独、単純。 九月九日 雨、さすがに厄日前後で雲行不穏。 よく飲んでよく寝た朝である、お天気は悪いが、私たちは快適であつた。 朝飯のうまさ、いや、朝酒のうまさ。 ああ、しづかだ、しづかな雨だ。 午後、Kの店員が、酒と豆腐と小鯛とを持つてきて、手紙をさしだした、樹明君が五時頃来庵するから仕度をしておいてくれとのことである、よしきたとばかり、豆腐はヤツコに、魚は焼いて、そしてチビリ/\やつてゐると、樹明君がすこし疲れたやうな顔をあらはした、さしつさゝれつ敬君を待つたが、とう/\駄目だつた、そして樹明君は暮れきらないうちに帰宅した。 めでたいわかれだつたけれど、少々淋しい別れでもあつた。 酒が、昨日の分と今日の分とを合せて、一升ばかり残つてゐる、さてもかはればかはるものであるわい! 人間は人間です、神様でもなければ悪魔でもありません、天にも昇れないし、地にも潜れません、天と地との間で、泣いたり笑つたりする動物です。 …… 九月十二日 晴、曇、仲秋、二百二十日。 いつものやうに早起きする、そしていつものやうに水を汲んだり、御飯を炊いたり、掃除したり、本を読んだり、寝たり起きたり。 …… 大空のうつくしさよ、竹の葉を透いて見える空の青さよ、ちぎれ雲がいう/\として遊ぶ。 陶房日記を読む、その味は無坪その人の味だ。 句稿整理、書かねばならない原稿を書く。 午後、蜆貝でも掘るつもりで川尻へ行く(魚釣しようにも鉤がないし蚯蚓も買へないから)、一時間ばかり水中にしやがんで五合ばかり掘つた、これ以上は入用がないので、土手の青草をしいて、渡場風景を眺める、ノンビリしたものである。 蜆貝といふものはとても沢山あるものだと思ふ、商 買 ( マヽ )人が二人、金網道具ですくうてゐたが、半日で三斗位の獲物があるさうだ、いづれどこか貝類をめづらしがる地方へ送るのだらう、帰途、かねて見ておいた みぞはぎを持つてかへつて活ける、野の花はうつくしい。 一日留守にしておいても何一つ変つてゐない、出たときのまゝである、今日は柿の葉が一枚散り込んでゐるだけ! 蜆貝汁をこしらへつゝ、私は私の冷酷、いや、人間の残忍といふことを考へずにはゐられなかつた。 仲秋無月ではあるまいけれど、雲が多いのは残念だ、思はず晩酌を過して、ほんたうに久しぶりに、夜の街を逍遙する、例の如くYさんから少し借りる、あちらで一杯、こちらで一杯、涼台に腰をかけさせて貰つて与太話に興じたりする、そのうちに幸か不幸かH君に会ふ、M食堂へ誘はれて這入る、女給よりも刺身がうまかつた! 酔歩まんさんとして戻つたのは三時頃か、アルコールのおかげで前後不覚。 …… 酔うても乱れない……山頭火万歳! 雲がいつしかなくなつて月が冴えてゐたことは見逃さなかつた、仲秋らしい月光に照らされて、私は労れてゐたけれど幸福だつた。 ・とうふやさんの笛が、もう郵便やさんがくるころの秋草 ・すすきすこしほほけたる虫のしめやかな 砂掘れば水澄めばなんぼでも蜆貝 食べやうとする蜆貝みんな口あけてゐるか 秋の蚊のするどくさみしくうたれた 徳利から徳利へ秋の夜の酒を ・ひとりいちにち大きい木を挽く いつとなく手が火鉢へ蝿もきてゐる ゆふべのそりとやつてきた犬で食べるものがない ・秋雨ふけて処女をなくした顔がうたふ ・何がこんなにねむらせない月夜の蕎麦の花 ・こゝろ澄ませばみんな鳴きかはしてゐる虫 ・おのれにこもればまへもうしろもまんぢゆさけ 出れば引く戻れば引く鳴子がらがら ・ひとりとひとりで虫は裏藪で鉦たたく 風が肌寒い新国道のアイスキヤンデーの旗 ・人のつとめは果したくらしの、いちじくたくさんならせてゐる いちめんの稲穂波だつお祭の鐘がきこえる 厄日あとさきの雲のゆききの、 塵芥 ( ゴミ )をたくけむり 九月十三日 晴、曇、雨。 山の先生か、山の鴉か、これも微苦笑物だ。 夕立がさつときて気持を一新してくれた、涼風といふよりも冷気が身にしみる。 新秋の風物は、木も草も山も空も人もすが/\しい。 今月に入つてから初めて生魚を買ふ、雑魚十銭(先月は一度塩鱒の切身を十一銭で買つたゞけだつた)。 障子をあけてはゐられないほど秋風が吹く、蓮の葉の裏返つた色にも秋の思ひが濃くゆらぐ。 前のWさんから鶏頭数株を貰つてきて、前庭のこゝそこに植ゑる、こゝにも秋が色濃くあらはれるだらう。 有仏処勿住、 無仏処走過、である、樹明君。 ・わかれて遠い瞳が夜あけの明星 ・草ふかく韮が咲いてゐるつつましい花 植ゑるより蜂が蝶々がきてとまる花 ・日向ぼつこは蝿もとんぼもみんないつしよに ・更けると澄みわたる月の狐鳴く ・朝月あかるい水で米とぐ 九月十四日 曇、ひやゝか。 朝は大急ぎで、原稿を書きあげて、層雲社へ送つた、駅のポストまで行つた。 尻からげ! 私はいつからとなく、尻からげする癖を持つやうになつた、尻をからげることはよろしい、 尻をまくることはよろしくないが。 曼珠沙華を机上に活ける、うつくしいことはうつくしいけれど、何だか妖婦に対してゐるやうな。 午後は近郊散策、これからはぶらりぶらりとあてなく歩くのが楽しみだ。 戻ると、あけておいた障子がしめてある、さては昨夜の樹明再来だなと、はいつてみると案の定、ぐうぐう寝てゐる、昨日から御飯を食べないからと鮨をたくさん持参してゐる、私もお 招 ( マヽ )伴した、暮れかけてから、おとなしく別れる。 …… 焼酎一合と鮨六つとで腹いつぱい心いつぱいになつて、蚊帳も吊らないで眠つてしまつた、夜中に眼覚めて月を観た。 食べたい時に食べ、 寝たい時に寝る、これが其中庵に於ける山頭火の行持だ。 ・日向はあたたかくて芋虫も散歩する ・朝は露草の花のさかりで ・身にちかく鴉のなけばなんとなく ・くもりしづけく柿の葉のちる音も ・萩さいてではいりのみんな触れてゆく 聟をとるとて家建てるとて石を運ぶや秋 秋空ふかく爆音が、飛行機は見つからない 九月十五日 晴、まこと天高し。 身辺整理、整理しても、整理しても整理しつくせないものがある。 待つともなく待つてゐた コクトオ詩抄が岔水居からやつて来た、キング九月号を連れて。 午後は近郊散策。 ゆふべ何となくさびしいので街へ出かけた、山田屋でコツプ酒二杯二十銭、見切屋で古典二冊二十銭、酒は安くないが、本はあまりに安かつた。 病んでもクヨ/\しない、 貧乏してもケチ/\しない、さういふ境涯に私は入りたいのだ。 ・食べるものはあるトマト畑のトマトが赤い ・水のゆたかにうごめくもののかげ ・空の青さが樹の青さへ石地蔵尊 ・秋晴れのみのむしが道のまんなかに 市井事をうたふ ・彼氏花を持ち彼女も持つ曼珠沙華 秋の夜ふけて処女をなくした顔がうたふ(改作) ・なんと大きな腹がアスフアルトの暑さ 九月十六日 朝は秋晴秋冷だつたが、それから曇。 今朝の御飯は申分のない出来だつた(目下端境期だから、米そのものはあまりよくない)、 身心が落ちつくほど御飯もほどよく炊ける。 もう米がなくなつたから(銭はむろん無い)、今日は托鉢しなければならないのだけれど、どうも気がすゝまない、といふ訳で、早目に昼飯をしまうて椹野川尻に魚釣と出かける、釣る人も網打つ人もずゐぶん多い、自転車がそこにもこゝにも乗り捨てゝある、私の釣は短かい、二時間ばかりで帰つて来た、運動がてらの、趣味興味以上でも以外でもないのだから。 其中漫筆 芸術は熟してくると、 さびが出てくる、 冴えが出てくる、 凄さも出てくる、 そこまでゆかなければウソだ、 日本の芸術では、殊に私たちの文芸では。 九月十八日 晴。 秋空一碧、風はまさに秋風。 防空演習の日。 托鉢しなければならないのであるが、どうも気がすゝまない、M店でコツプ酒一杯ひつかけて、H店で稲荷鮨十ばかり借りて来て休養、読書、思索。 飛行機の爆音が迫る、砲声がとゞろく、非常報知のサイレンが長う鳴る……非常時風景の一断面だ。 今夜も昨夜のやうに蚊帳を吊らなかつた、肌寒い、燈火管制で点燈しない。 うつくしい有明月夜だつた、狐が鳴いた。 ・晴れきつて青さ防空のサイレンうなる しきりに撃ちまくる星がぴかぴか ・燈火管制の、風が出て虫が鳴きつのる 燈火管制 ・まつくらやみで煮えてる音は佃煮 ・ぴつたりけさも明星がそこに 九月十九日 快晴。 子規忌、子規逝いてから三十四年の今日である、俳壇の推移展開を考へる。 Hさんからうれしい手紙が来た、般若湯代が入れてあつた、さつそく湯田へ行く、山口を歩く、飲む食べる、……友のありがたさ、湯のありがたさ、酒のありがたさ、飯のありがたさ……何もかもありがたかつた、そして買物いろいろさまざま、それを肩にして、帰途、農学校へ寄つて、今日は私が一升買つた、ちようど宿直の樹明君とI君と三人で畜舎の宿直室で飲んだが、 ちりがうまかつた、帰庵したのは十時頃か、少々飲みすぎて苦しかつた。 過ぎるは 足らないよりもいけない。 ・ばさりと柿の葉のしづけさ つめたい雨のふりそゝぐ水音となり 九月二十日 曇、雨となる。 昨夜の今朝だから腹工合がよろしくない、自業自得、観念する外はない。 神湊の惣参居士が、わざ/\私のために般若心経講義(高神覚 升 ( マヽ )師)を取寄せて、送つて下さつた、感謝以上のものである。 こほろぎの声がだん/\鋭くなる。 …… 午後、街へ出て、種物、染粉、柿渋などを買ふ。 今日もY酒屋のSちやんがやつてきた(昨日も留守中に来たさうである)、若い人には若い人としてのよさがある、しつかりやりたまへ。 其中漫筆 必然性(歴史的) 現実 文学 可能性(社会科学的) 九月廿一日 雨、彼岸。 見わたすと、柿がだいぶ色づいた、柿がうれてくるほど秋はふかくなるのだ。 秋蝿の、いや、私の神経過敏に微苦笑する。 つくつくぼうしの声も弱々しくなつて、いつともなく遠ざかつてゆく。 夕方、見馴れない人が来たと思つたら、国勢調査の下調査だつた、私のやうなものでも、現代日本人の一人であるに相違ない。 其中漫筆 独酌の味。 対酌の味。 田舎をまはる昔ながらの 琵琶法師。 村のデパート。 九月廿二日 曇。 二百 三 ( マヽ )十日もまづ無事で珍重々々。 百舌鳥の声が耳につくやうになつた。 子供が竹刀を揮つて曼珠沙華をばさり/\と撫斬りしてゐる、私にもさういふ追憶がある、振舞はちと残酷だけれど、彼等の心持にはほゝゑましいものがある。 ゴム長靴を穿いて、バケツを提げて、豆腐買ひに出かける、自分ながら 好々爺らしく感じる。 今晩は晩酌なし、やりたくないのぢやない、やりたいのだけれどやれないのだ、むりにやるには及ばない。 やうやく雲がきれて夕日が射してきた。 其中漫筆 何をたべてもおいしく、 何を為てもおもしろく、 何を見てもたのしく、 何を聞いてもたのしく。 九月廿三日 曇、秋冷、野分らしく吹く。 朝から寝ころんで漫読とはゼイタクな! 午後は魚釣とはまたゼイタクな。 小沙魚六つ、ゴリ五つ、いつものやうにあまり釣れない、あまり釣らうとも思はないが。 早々帰庵して、不運な彼等を火焙りにして(私としては荼毘に附して、といつた方がよからう)、一杯やつた。 それから(この それからがちつとばかりよくなかつたが)、駅のポストまで、それからY屋へ、M店へ、F屋へ、等々で飲み過ぎた(つまり、多々楼君の温情を飲んだ訳である、貨幣として八十銭!)。 飲み過ぎて歩けないから、無賃ホテル(駅の待合室)のベンチで休息した、戻つたのは夜明近かつた。 山頭火万歳! 九月廿四日 暴風雨。 今日は彼岸の中日だが、これではお寺参りも出来まい、鐘の音はちぎれて鳴るが。 昨日、魚釣の帰途、採つて戻つた紫苑 男 ( マヽ )郎花を活ける、やつぱり 秋の草花だな。 午後、風雨の中をSさん来訪、酒持参で、つゞいて樹明君来庵、豆腐と野菜と魚とを持参して、御馳走、御馳走、 ちりはうまいな、ほどよく酔うて夕方解散。 少々飲み過ぎ食べ過ぎたやうだ。 ・花のこぼるゝ萩をおこしてやる ・野分あしたどこかで家を建てる音 ・からりと晴れて韮の花にもてふてふ ・歩けるだけ歩く水音の遠く近く ・燃えつくしたるこゝろさびしく曼珠沙華 九月廿六日 晴、時々曇つてはしぐれる。 朝寝した、寝床から出ないうちに六時のサイレンが鳴つた。 午後、近在を散歩する、三里ぐらゐは歩いたらう、途中で、軽い狭心症的発作が起つた。 帰つてくると、誰やら来てゐる、昨日の中村君だ、縁側で文芸談、等々。 花めうが(?)が最初の花をつけた、まことに清楚なすがたである、これをわざ/\持つてきて植ゑてくれた黎坊に報告して喜ばせなければなるまい(一昨春)。 気取るな、 気構へを捨てろ! 夜中、行李から冬物をとりだすとき、油虫七匹ほどたゝき殺した、そしてそれが気になつて、とりとめもない事を考へつゞけた、何といふ弱虫だ、私は油虫よりも弱い。 ・咲きつづく彼岸花みんな首を斬られてゐる うつくしい着物を干しならべ秋晴れ ・百舌鳥が鋭くなつてアンテナのてつぺん ・風のつめたくうらがへる草の葉 ・秋晴れて草の葉のかげ 九月廿七日 晴。 朝寒、米磨ぐ水がやゝつめたく、汲みあげる水がほのかにあたゝかい。 夏物をしまうて冬物をだす、といつたところでボロ二三枚だが。 今日も午後は近在散策。 夕方、樹明君が酒と肴とを奢ることになつて用意してゐると、敬君がまた酒と肴とを持つて来た、三人楽しく飲み且つ語る、過去の物語が賑つた、十時近くなつて快く散会、近来うれしい会合だつた、ぐつすり前後不覚の睡眠がめぐまれた。 ・たえずゆれつつ葦の花さく ・水音の流れゆく秋のいろ ・青草ひろく牛をあそばせあそんでゐる ・と なも ( マヽ )お留守で胡麻の実はじける ・鉄鉢の秋蝿を連れあるく ・秋暑い鉄鉢で、お米がいつぱい おでんや ・更けると食堂の、虫のなくテーブル ・秋はうれしい朝の山山 九月三十日 日本晴、時々曇つたり降つたりしたけれど。 身辺整理。 けふも郵便が来ない、山の鴉が庵をめぐつて啼きさわぐ、何だか気になる、何となく憂欝になる。 ・うなりつつ大きな蜂がきてもひつそり ・ひなた散りそめし葉の二三枚 ・酔ひのさめゆく蕎麦の花しろし ・柿一つ、たつた一つがまつかに熟れた ・柿の葉のおちるすがたのうれしい朝夕 ・かまきりがすいつちよが月の寝床まで 十月三日 時雨、やつと晴れた。 裏からあたりを眺めると、もうそここゝ黄葉してゐる、柿の葉がばさり/\と落ちる。 小郡の招魂祭、ポン/\花火が鳴る、彼等に平和あれ。 畑仕事、新菊を播き添へ、山東菜を播き直す、 播くといふことはうれしい。 街のポストまで出かける、そして酒と肴とを送つて貰ふやうにY屋へ頼む。 茶の花がもう咲きだしてゐる、それを鑑賞してゐて御飯の焦げるのも知らなかつた、しかし焦げた御飯は、いや焦げるまで炊きあげた御飯はおいしいものである。 久しぶりの、ほんたうに久しぶりの、 小さい、 小さい脱線だつた。 時々は脱線すべし、ケチ/\すべからず、クヨ/\すべからず。 めづらしくも朝寝、寝床へ日がさしこむまで。 天地一枚といふ感じ、ほんたうに好い季節である。 私にだけ 層雲が来ない、何となく淋しい。 昨夜の今朝で、こゝろうつろのやうな。 佐野の妹を訪ねようかとも思つたが、着物の質受が出来ないので果さない、床屋で気分をさつぱりさせて貰ふ。 菜葉一把三銭也、新漬として毎朝の食膳をゆたかにしてくれる。 暮れるころ、樹明君来庵、お土産は酒と魚と、そして原稿紙。 愉快に談笑して十時頃にさよならさよなら。 私がいつものやうに飲めなくて気の毒だつた、御飯を食べてゐたから。 松茸ちりが食べたいな、焼松茸は昨夜たくさん食べたけれど。 今朝もおあまりで朝酒。 天いよ/\高く地ます/\広し。 黎々火君が 層雲、緑平老が 大泉を送つてくれた。 酒があつて飯があつて、 そして寝床があつて、 ああ幸福々々。 十月七日 まつたく秋日和。 朝寝、寝床の中で六時のサイレンを聴いた。 日向の縁で本を読んでゐると、うつくしいパラソルが近づいてくる、ハテナと思つてゐると、さつさうとして山口の秀子さんがあらはれた、小郡駅まで来たので、ちよつとお伺ひしたといふ、其中庵も時ならぬ色彩で飾られた、しばらく対談、友達を訪ねるといふので(その友達は農学校の先生のお嬢さんで、そしてその宅は農学校の裏にあるので)、農学校まで同道して、樹明君に案内を頼んで戻つた、道すがら、人々が驚いてゐる、何しろ私が若い美しい女性と連れ立つてゐるものだから! 行乞しなければならないのだが(もう米がないのだが)、どうしても行乞する気になれない。 大根も山東菜も虫害で全滅! ああ。 秋海棠のまぼろし! それは私の好きな草花、そして、うれしいかなしい熊本生活のおもひで。 うまい ちりだつた、うまい さけだつた、おとなしくこゝろよく酔うて、ふたりともぐう/\、ぐう/\。 ミスH子をうたふ二句 ・秋草のむかうからパラソルのうつくしいいろ ・秋空のあかるさに処女のうつくしさ ・釣糸の張りきつて澄んで秋空(魚釣) ・秋空たかくやうやく出来上つたビルデング ・日まわり陽を浴びてとろとろ ・近道は蓼がいちはやくもみづりて ・なんでとびつくこうろぎよ ・いちめんに実りたるかな瑞穂の国 しめやかにふりだして松茸のふとる雨 十月八日 晴。 早起、まづ聴いたのは百舌鳥の声、視たのは蕎麦の花。 朝酒、ほろり/\と柿の葉が落ちる。 とても好いお天気、ぢつとしてはゐられないので出てあるく。 米は買へないから(一升三十二銭)食パンを買ふ(一斤十四銭)、そして行乞はしないのだ、こゝにも私のワガママがあるけれど、それが私のウマレツキだから、詮方もない。 今日は油虫を二度とも殺しそこなつた、かうまで油虫が憎いとは情なくなる。 Nさん来庵、恋愛談を聞かされる、かういふ話も時々は悪くない(度々では困るけれど!)。 やつと番茶が買へたので、それをすゝりながら話しつゞけた。 食パンが近来飲みすぎ食べすぎの胃腸をとゝのへてくれるとは。 …… 今夜は樹明君宿直なので、六時のサイレンが鳴つてから訪ねる、いつものやうに御馳走になる、思はず飲みすぎて酔つぱらつた、まつすぐに戻ればよいのに横道にそれてしまつた、戻ることは戻つたけれど、愚劣な自分を持てあました! 自由、流動、気 魂 ( マヽ )。 十月九日 曇、寒い。 朝焼がうつくしかつた。 昨夜の自分を反省して、仏前にお詑びした。 …… しつかりしろ山頭火! あんまり下らないぞ! 煩悩無尽誓願断。 自覚すれば、醜悪にたへないやうな自分を見出すことはあまりにあさましい、 自分のよさをも自覚しなければ嘘だ(人には誰でも よさがある、あらなければならない)。 曇つて風が吹く、まさに秋風だ。 断食(絶食とは意味違ふ)と読書と思索。 湯田へ連れて行つて貰つた、ほどよく酔うてM旅館にいつしよに泊めて貰つた。 十一月十一日 日本晴。 Aさんの厚情に感謝しないではゐられない。 山口散策。 りんだう、野菊、秋草がうつくしい。 夜は酒を持つて宿直室の樹明君を訪ふ。 十一月十二日 曇。 寒くなつた、草が枯れるばかり。 ホントウがウソになつたり、ウソがホントウになつたり、澄んだり濁つたり。 冬がいよ/\近寄つて来た。 山口句会へ。 身辺整理、私は dead rock を乗り越えることが出来たゞらうか。 落葉しつくした柿の木、紅葉してゐる櫨の木。 父、母、祖母、姉、弟、……みんな消えてしまつた、血族はいとはしいけれど忘れがたい、肉縁はつかしいがはなれなければならない。 …… 十一月廿四日 曇。 しぐれ、冬らしい寒さ、火燵の仕度をする。 腹いつぱい麦飯を食べた。 片隅の幸福が充ち満ちてゐるではないか。 Tさんだしぬけに来庵、酒を貰ふ、句集を買つて下さつた。 街へ出かけて払へるだけ払ふ。 十一月廿五日 晴。 今日は昨日頂戴した菊正がある。 敬君久しぶりに来訪、一杯ひつかけてから、ぶら/\どろ/\、飲んだ飲んだ、食べた食べた、そしてめでたく解散。 しぐれ、しぐれにぬれてかへつてきた。 十一月廿六日 晴。 小春日和のうれしさ、湯田へ出かける。 留守に敬君がやつて来たさうな、すまなかつた。 …… 十二月一日 雨。 こん/\として眠つた、眠るより外ない私だつた。 旅人山頭火、 死場所をさがしつゝ私は行く! 逃避行の外の何物でもない。 このファイルは W3C 勧告 XHTML1. 1 にそった形式で作成されています。 [#…]は、入力者による注を表す記号です。 「くの字点」をのぞくJIS X 0213にある文字は、画像化して埋め込みました。 傍点や圏点、傍線の付いた文字は、強調表示にしました。 この作品には、JIS X 0213にない、以下の文字が用いられています。 (数字は、底本中の出現「ページ-行」数。 二重四角 258-12、258-13、258-14、265-2、265-5、265-8、277-14、280-4、280-6、280-10、283-3、291-6 感嘆符三つ 15-13.

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